美容クリニック インタビュー

眼科で培った手技を、目もとへ。AILE Clinicが貫く引き算の美容医療

更新日:2026/08/26
井原 力哉

インタビュー

井原 力哉

眼科で培った手技を、目もとへ。AILE Clinicが貫く引き算の美容医療

顔立ちや肌の悩みに、医療で応える。

美容医療は以前より手の届く選択肢になった。

しかし、選ぶ側の負担まで軽くなったとは言い切れない。

全国の消費生活センターに寄せられる美容医療サービスに関する相談は増え続けている。

政府広報オンラインによれば、その件数は2023年度の6,000件程度から2024年度には10,000件を超えた(*1)。

相談の背景には、契約や必要以上に思える施術への戸惑いがある。

美容医療は足していく方向へ進みやすい。

より整える、より若く。

望めば施術はいくらでも積み増せる。

一方で、「ここまでにしておく」と伝える提案は、多くの場合、売上とは逆を向く。

必要以上をしないと決めておくには、そう言える環境がいる。

東京・上野の「AILE Clinic」で院長を務める井原力哉医師は、その環境を自分でつくることから始めた。

AILE Clinic 受付前
AILE Clinic 受付前

眼科で研鑽を積んだのち美容医療へ移り、目もとやクマの相談を数多く受けてきた。

複数のクリニックで相談を重ね、どこまで施術すべきか迷った末にたどり着く患者も少なくない。

必要以上をしないという選択は、どうすれば当たり前にできるのか。

その問いに、井原医師は「言える立場を、自分でつくる」という形で応えてきた。

立地や院内づくりから独立の経緯まで、細部に至るその思いを聞いた。

*1:美容医療サービスの消費者トラブル サービスを受ける前に確認したいポイント|政府広報オンライン(国民生活センター PIO-NETデータ、2025年5月31日現在)

AILE Clinic
井原 力哉
井原 力哉
院長
2014年に東京大学医学部医学科を卒業し、JR東京総合病院で研修を開始。2015年に東京大学医学部附属病院、2016年からは倉敷中央病院の眼科に勤務し、眼科医として臨床経験を重ねた。2018年に美容医療の分野へ移り、2021年にAILE Clinicを開院。美容外科・美容皮膚科・美容内科を掲げ、二重やクマの治療といった目もとの施術を中心に、ヒアルロン酸やボツリヌストキシンなどの注入、糸リフトまで幅広く手がける。カウンセラーを介さず医師自身が診察からアフターフォローまで対応し、患者の希望や予算、ダウンタイムをふまえて、必要以上の施術を勧めないことを診療の方針としている。

足すより、引く。「ここまでしなくていい」を一緒に見極める

AILE Clinic 井原 力哉院長
AILE Clinic 井原 力哉院長

―診療で大切にされていることをお聞かせください。

井原:必要以上のことはしない、という点をいちばん大切にしています。

相談で多いのは目もと、なかでもクマです。

来院される方の8〜9割は女性で、年代でいうと40代前後が中心です(*2)。

クマの治療には、手術や注射、注入など複数の方法があり、組み合わせて行うこともあります。

ただ、施術を重ねるほど、費用の負担も、ダウンタイムやリスクも積み上がっていきます。

どこまで手をかけたいかは患者さんによって違いますので、まずはどれくらいの仕上がりを目指したいのかを丁寧にうかがいます。

そのうえで、どこまで手を加えるかを一緒に決めていきます。

話してみると、目指すところによっては、思っていたより少ない施術で十分という場合もかなりあります。

やればやるほど変化は出せますが、それが患者さんの望むものとは限りません。

少しでも良くなればいい、という方に、大きく変える施術を勧める必要はないのです。

どこでとどめるかを一緒に考えるところに、時間をかけています。

診察室の様子
診察室の様子

―施術の方針は、どのように決めていくのでしょうか。

井原:患者さんがどこまでを望んでいるかを、まず丁寧にうかがうところから決めていきます。

たとえばクマの治療では、目の下のへこんだ部分にヒアルロン酸などを注入し、ボリュームを補うことで、影が目立ちにくくなります。

ただ、同じ注入でも、入れる量によって仕上がりは大きく変わります。

大きく変えたいわけではないけれど、少しだけ良くしたい、という患者さんも多くいらっしゃいます。

そうした方であれば、少ない量で十分なことも少なくありません。

1本のみの使用をご希望であれば、その範囲でできることをして「足りなければまた来てください」とご案内しています。

私自身は、できるだけ控えめにという考え方です。

もちろん、しっかり変えたいというご希望があれば、それに合わせます。

また、何でも手を加えればよい、というものでもありません。

あえて残しておいたほうが自然に見えることもあります。

男性のクマでは、へこんだ部分にボリュームを出すとクマ自体は目立ちにくくなりますが、顔立ちの印象が変わってくることがあります。

自然さや男性らしさを保つために、あえて控えめにとどめたほうがよい場合もあるのです。

どちらを目指すかは患者さんによって違いますので、方向性をうかがったうえで決めていきます。

*2:2026年6月インタビュー時点、AILE Clinic調べ

一度で終わる施術ばかりではない。だから、通いやすさにこだわる

生体情報モニターや医療用ガスを備えた処置室
生体情報モニターや医療用ガスを備えた処置室

―立地を選ぶうえで、重視された点をお聞かせください。

井原:通いやすさを最優先に考えました。

美容医療は、一度受けたら終わりという施術ばかりではありません。

万が一、経過に思わしくない点があれば、状態を診て、必要な処置で対応します。

経過が順調な場合でも、状態を保つために続けて通っていただくことがあります。

続けて通うことを前提にすると、無理なくお越しいただけるかどうかが大切になります。

そのため、複数の路線が使えて、駅からすぐにお越しいただける場所を選び、このテナントで開業しました。

遠方から時間をかけて年に数回来るというより、生活の動線のなかで気軽に立ち寄っていただけることを大切にしています。

―院内の雰囲気づくりでは、どのようなことを心がけましたか。

井原:落ち着いて過ごしていただけることを心がけました。

色みを抑えたグレーを基調にしています。

落ち着いた色味や雰囲気で統一された院内
落ち着いた色味や雰囲気で統一された院内

初めて訪れるだけなら気になりませんが、何度も通う場所では、明るすぎたり掲示物が多かったりすると、かえって落ち着きません。

そのため全体をシンプルにまとめ、何度も足を運んでいただきやすいことを優先しました。

椅子などの備品も、特別なものではなく普段づかいのものを選んでいます。

華やかな設えは初めこそ目を引きますが、何度も通う場所では、気負わず過ごせるほうが心地よいと考えています。

美容医療は、以前はごく一部の方が受けるもので、費用の面でもハードルが高いものでした。

それがいまは、SNSや動画を通じて情報に触れる機会が増え、歯科に通うような感覚で来られる方が、女性にも男性にも広がっています。

身近なものになってきたからこそ、日常の延長として通っていただける場所でありたいと考えています。

「その人に合うもの」を選ぶために、メニューの幅を持つ

仕切りのある待合室の様子
仕切りのある待合室の様子

―糸リフトのメニューに「AILE式」とありますが、どのようなものでしょうか。

井原:糸リフトは、使う糸の素材と形によっていくつかのタイプに分かれます。

当院で扱っているPCLリフトは、引き上げの効果に主眼を置いたものです。

もう一方のメッシュリフトは、引き上げに加えて、時間の経過とともに糸の周りに組織が絡み、その部分が締まっていく働きも期待できます。

皮膚が厚く、皮下のふくらみが大きい方には、こちらが適しています。

同じ悩みでも、肌の状態によって適したタイプは変わりますので、二つを使い分けられるようにしています。

「AILE式」としているのは、糸の研究を重ねている知り合いの医師が扱う糸のなかから、当院に合うものを選んで使っているためです。

違いは糸そのものだけではありません。

糸を入れる際にはカニューレという細い管を使うのですが、その管の素材や、糸を留めるストッパーの形状といった細部にも違いがあります。

そうした一つひとつが、施術のしやすさや仕上がりに関わってきます。

既製の糸をそのまま使うのではなく、細かな点まで見極めて取り入れる、オーダーメイドに近い形をとっています。

どのタイプが合うかは一人ひとり異なりますので、状態を診たうえで選び、ご提案しています。

―スプリットタンのような施術も扱っていますが、どのような考えで取り入れているのでしょうか。

井原:スプリットタンは、舌の先を二つに分ける施術です。

ご希望される方の数こそ多くありませんが、この施術を目的に来院される方は確かにいらっしゃいます。

数が少ないからと扱いをやめてしまえば、求めている方が相談できる場所は、さらに限られてしまいます。

求めていらっしゃる方がいる以上は、きちんと応じられるようにしておきたいと考えています。

よく求められる施術だけをそろえるのではなく、幅を持たせておくことで、目の前の方に合った選択肢をご用意できます。

当院で大切にしているのは、メニューに合わせていただくのではなく、その方のご希望に沿って一緒に考えることです。

暮らしの質をより良くしたい。眼科から美容へと続く一本の線

シミやクマの施術に用いるレーザー機器を設置した施術室
シミやクマの施術に用いるレーザー機器を設置した施術室

―医師を志し、眼科を選ばれた背景をお聞かせください。

井原:幼い頃に斜視の手術を受けたことがあり、それが医療に触れた最初の経験でした。

もともと関心があったのは、寿命そのものを長く保つことよりも、生活の質を良くすることでした。

見えにくかった目がよく見える、聞こえにくかった耳が聞こえる、痛みで歩けなかった膝が動くようになる。

そうした暮らしに直結する変化のほうに、大きな価値を感じていました。

もう一つは、細かな手技への向き合い方です。

眼科の手術は、1ミリにも満たない繊細な組織を、顕微鏡をのぞきながら扱っていきます。

その緻密な作業を積み重ねることが、自分の性に合っていました。

生活の質を良くしたいという思いと、手先の適性が重なって、まずは眼科を選びました。

研修を経て倉敷中央病院の眼科に移り、眼科の手術を通じて臨床の経験を重ねていきました。

―そこから美容医療へ移られたのは、どのような理由からでしょうか。

井原:私が大学を卒業した頃は、卒業後すぐに美容医療へ進む道は、いまほど一般的ではありませんでした。

眼科や皮膚科、形成外科などで臨床を経験してから移る医師が多く、学生のうちに美容医療そのものに触れる機会も、ほとんどなかったのです。

私自身も、眼科で働きはじめてから、この分野の話が耳に入るようになりました。

眼科の仕事が嫌いだったわけではありません。

細かな手術にはやりがいがあり、いまでもその思いは変わりません。

そのうえで美容医療に惹かれた理由の一つは、施術の結果が目に見えて表れることでした。

ヒアルロン酸の注入なら直後から、手術でもダウンタイムを経て、患者さんご自身が変化を確かめられます。

手をかけたことが目に見える形になるところに、手応えを感じていました。

目もとの繊細な組織を扱う点では、眼科で培った手技がそのまま生きます。

生活の質を良くしたいという関心も、美容医療と重なっていました。

その延長線上で、美容医療のほうへ軸足を移していきました。

「無理に勧めない」を前提に。そのために、自分の場を持った

AILE Clinic 井原 力哉院長
AILE Clinic 井原 力哉院長

―開業を意識されたのは、どのような思いからでしたか。

井原:勤務医として大手のクリニックで働いていた頃のことです。

組織として、数字や決められた進め方に沿う必要がある場面がありました。

雇われる立場であれば、そこに応えることが求められます。

そうしたなかで、必要以上のことはせず、患者さんの希望に沿って診療したいという思いが、次第に強くなっていきました。

その考えを診療の前提そのものにするには、自分で場を持つのがいちばんだと考えました。

自分の体制であれば、無理に勧めない診療を、最初から組み立てられます。

2021年に上野で開業したのは、その思いを形にするためでした。

―開業して、患者さんとの関わりで変わったことはありますか。

井原術後の患者さんの声を、直接受け取れるようになったことです。

規模が大きくなると、最初の相談を担当する者と、施術をする医師とが分かれていくことが多くあります。

当院では、受付が問診票の内容やご希望、モニターを希望されるかどうかの確認は行いますが、施術を勧める役割は置いていません。

相談から診察までを私自身が担い、初めから最後まで同じ立場でお話しします。

ご予約の管理も、外部の窓口に任せず、自分で把握しています。

お問い合わせのメールやLINEも、すべて自分で目を通しています。

そのため、施術のあとにどう感じられたか、どのような経緯でご予約に至ったかまで、直接つかむことができます。

経過を見て早めに診ておきたいと思えば、その場で少し早めのご来院をお願いすることもできます。

窓口を挟まないぶん、術後の見守りでも患者さんとの距離が近くなりました。

大きくするより、続ける。それが、通う人を守ることになる

施術に用いる機器と設備を整えた施術室
施術に用いる機器と設備を整えた施術室

―今後、クリニックをどのように続けていきたいとお考えですか。

井原:規模を大きくしていくより、無理なく続けていくことを重視しています。

美容医療は開院・閉院が多い業界でもあります。

だからこそ、派手さより継続性を重視して運営を続けることが、通ってくださる方にとっての信頼につながると考えています。

以前に受けた施術の経過を診てほしいというご相談も、当院にはいただきます。

記録が手元にない場合も、状態を診て判断しています。

治療の途中であれば、患者さんの負担はいっそう重くなります。

だからこそ、目の届く範囲で長く続けられることを、何より大切にしたいと考えています。

派手に広げることよりも、通ってくださる方が変わらず戻ってこられる場を保つこと。

そちらのほうが、患者さんにとって意味があると思っています。

―規模を追わないことは、診療にどうつながっていますか。

井原:一人ひとりに、これまでと同じように向き合い続けられます。

規模を大きくするほど、私自身の目や手が届かない部分は増えていきます。

自分が診られる範囲にとどめておけば、施術も術後のやり取りも、これまで通り続けていくことができるのです。

運営に無理がなければ、費用を上乗せするような診療をせずに済みます。

それは、働くスタッフが腰を据えて仕事を続けられることにもつながります。

長い目で見て、患者さんにもスタッフにも無理のない形を保つ。

それが、このクリニックを続けていくうえでの土台だと考えています。

迷ったら、まず相談を。決めていなくても構わない

落ち着いた設えのパウダールーム
落ち着いた設えのパウダールーム

―美容医療を考えている方に、伝えたいことはありますか。

井原:迷ったときは、まず気軽にご相談いただければと思います。

どこかで多くの施術を勧められ、そこまで必要なのだろうかと立ち止まる方もいらっしゃいます。

目指したい仕上がりも、かけられる予算も、休みを取れる日数も、人それぞれ違います。

ですから、その方に合った形を一緒に考えるところから始めます。

すべてを最大限にすることが、いつも望ましい答えであるとは限りません。

ご本人が納得できる範囲で整え、それで満足していただけることもあります。

「少しだけ変化を出したい」という思いにも、きちんとお応えしたいと考えています。

AILE Clinic 井原 力哉院長
AILE Clinic 井原 力哉院長

―どのような姿勢で患者さんを迎えたいとお考えですか。

井原長く通っていただける相手でありたいと考えています。

一度きりで終わる関わりではなく、必要なときに戻ってこられる場でありたいのです。

そのためにも、その日のご希望に無理な上乗せをすることはしません。

目の前の方が何を望んでいるのかを、丁寧にうかがうことを何より大切にしています。

美容医療は、少しずつ身近なものになってきました。

だからこそ、一人ひとりに合った距離感でこれからも向き合っていきたいと思っています。

インタビューを終えて

井原医師の語りを通して一貫して伝わってきたのは、足していくことが当たり前になりがちな美容医療のなかで、あえて手をとどめるという姿勢だった。

どこまで手を加えるかを、患者の希望と予算、ダウンタイムをふまえて一緒に見極める。

やればやるほど変化は出せるからこそ、どこでとどめるかに時間をかける。

その一つひとつは、派手さとは遠い、地道な見極めの積み重ねである。

こうした姿勢は、診療の場面にとどまらない。

通いやすい立地を選び、続けやすい院内をつくり、受付や予約の窓口を挟まず自ら患者と向き合う。

規模を追わず、目の届く範囲で長く続けることを選ぶ。

その根には、無理に勧めない診療を当たり前にしたいという思いがあり、井原医師はそれを叶えるために、自分の場を持つことから始めた。

「AILE」とは、フランス語で「羽」を意味する。

そこには、訪れた人がまた羽ばたけるように、明日をもう少し前向きに過ごせるように、という願いが込められている。

求める仕上がりを自分では決めきれない。

そう感じたときに、一緒に立ち止まって考えてくれる医師がいることは、これから美容医療に向き合う人にとって、心強い支えになるはずだ。

AILE Clinicについて

AILE Clinicについて
項目 詳細
クリニック名 AILE Clinic(エールクリニック)
院長 井原 力哉(いはら りきや)
クリニック紹介 2021年開院。美容外科・美容皮膚科・美容内科を掲げ、二重やクマの治療といった目もとの施術を中心に、ヒアルロン酸やボツリヌストキシンなどの注入、糸リフトまで幅広く手がける。カウンセラーを介さず医師自身が診察からアフターフォローまで対応し、患者の希望や予算、ダウンタイムをふまえて、必要以上の施術を勧めない診療を大切にしている。
所在地 〒110-0005
東京都台東区上野6丁目2-14 喜久屋ビル9階
アクセス JR御徒町駅から徒歩1分
都営大江戸線 上野御徒町駅・東京メトロ日比谷線 仲御徒町駅・東京メトロ銀座線 上野広小路駅からA7出口直結
電話番号 03-6284-3700
診療時間 10:00〜19:00
休診日:日曜日・不定休
Webサイト https://aile-clinic.jp/
ご予約 Web予約
インタビューした人
加藤俊
株式会社Sacco 代表取締役
加藤俊
株式会社Sacco代表取締役。一般社団法人100年経営研究機構参与。一般社団法人SHOEHORN理事。週刊誌・月刊誌のライターを経て2015年Saccoを起業。 連載:日経MJ・日本経済新聞電子版『老舗リブランディング』、週刊エコノミスト 『SDGs最前線』、日本経済新聞電子版『長寿企業の研究』
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