「シミが気になってきた、疲れやすくなった、眠れない——どれも別々に科を選ばなくていい。まとめて私に相談してください。」
そう語るのは、東京都港区南麻布にあるM’sクリニック南麻布の伊藤まゆ院長だ。
広尾駅から徒歩約3分と好立地だが、看板は小さく、屋外広告も出していない。
それでも、開院から約20年、来院される方の多くは既存の患者さんからのご紹介だという。(※1)
遠方から長年通う患者さんや、多世代にわたって通う家族もいるそうだ。
シミが増えてきた、肌が荒れている、更年期かもしれない、なんとなく不調だが、何科に行けばいいかわからない——
そういった相談が、このクリニックには日常的に持ち込まれる。
診療科目としては美容皮膚科・内科・皮膚科・漢方内科を標榜しているが、「何科か」よりも「まず話を聞く」ことを出発点にしている。
美容クリニックに内科的な診療を組み合わせる「内外美容」の考え方、そして紹介を中心とした信頼関係で継続してきた小規模クリニックのあり方について、伊藤院長に話を聞いた。
*1:2026年5月インタビュー時点、M’sクリニック南麻布調べ
1994年、聖マリアンナ医科大学卒業。同大学病院および関連病院にて一般・消化器外科に従事(日本外科学会認定 外科専門医(日本外科学会、※4)として勤務経歴あり)。その後、都内の美容クリニックを経て、2005年7月メディアージュ青山通りクリニック院長。2007年8月、東京都港区南麻布にM’sクリニック南麻布を開院。2012年1月、南麻布4丁目に移転。西洋医学をベースに、ホルモン補充療法、漢方処方、アロマテラピーなどを組み合わせた「体の内と外からの抗老化医療」をコンセプトに診療を行っている。
生活、体調、精神状態―内面の状態が美容に影響する「内外美容」の考え方

―診療の中で特に大切にされていることをお聞かせください。
伊藤:一番伝えたいのは「内外美容」という考え方です。
「内外美容」と聞くと点滴やサプリメントをイメージされるかもしれませんが、私はより広い意味で捉えています。
眠れないことが続けばクマや肌荒れが出ますし、ストレスが重なれば顔色がくすみます。
ホルモンバランスが乱れれば、肌だけでなく気力にも影響が及びます。
ですから当クリニックでは、肌のことだけでなく、睡眠の状態、更年期の不調、体のだるさ、気持ちの状態まで含めて、まず話を聞くことから始めています。
来てくださる方の多くは、美容の相談だけでなく、ご家族のこと、お仕事のこと、体の不調、気持ちの揺れなど、さまざまな事情を抱えていらっしゃいます。
ここで話して少し気持ちが軽くなってお帰りになる。それもひとつのケアだと思っていますし、それ自体が美容につながると考えています。
美容クリニックの役割として、シワやシミを外側からケアすることも大切ですが、体の内側の状態が整ってこそ、外見にも変化が表れると考えています。
消化器外科医として積んだ経験が、会話を重視する診療の土台

―医師を志したきっかけを教えてください。
伊藤:きっかけとしては、「人が倒れたときに駆けつけられる仕事をしたい」という思いから医学の道を選びました。
大学卒業後は消化器外科・一般外科に約6年携わり、乳腺外科や甲状腺外科など内分泌領域の経験も積みました。
消化器外科は全身にまたがる消化器を扱うため、女性の患者さんから「同性の医師だからこそ、日常の細かな不調まで話しやすかった」と言っていただく機会が多くありました。
そうした経験から、患者さんとの会話を通したコミュニケーションの重要さを実感し、話を聞くことが診療の中で重要な位置を占めるようになっていきました。
こうして、患者さんと話すことにやりがいや適性を感じるようになりました。
―M’sクリニック南麻布での「なんでも相談してほしい」という、「話を聞く」診療に通じているのですね。
伊藤:外科病棟では、お腹などの手術後に絶食しなければならないことがよくあります。
そうした患者さんが退院され、しばらくして外来に来られると、顔色も肌艶もまったく変わっています。
そんな姿を何度も目にするうちに、食べるものや体の内側の状態が、外見に直接表れるということを実感として理解しました。
こうして、「体の内側と心の状態を整えると肌が変わる」ということに気づき、皮膚への関心が深まっていきました。
内臓を診てきたからこそ分かる皮膚のこともあります。それが当クリニックでの診療にもつながっています。
「何科に行けばいいかわからない」ときの相談窓口として

―美容クリニックでありながら、内科的な相談を受けることも多いそうですね。
伊藤:美容施術を目的に来てくださる方でも、体の調子が悪いことはあります。
シミが気になってきたというのは、体の内側にも変化が表れているサインであることが多いものです。
睡眠が乱れてきた、以前より疲れやすくなった——そういったことも含めて、お話しをしながら診ていきます。
診療科が細分化されていると、どの科にかかればいいかわからないまま、受診を先延ばしにしてしまうこともあると思います。
当クリニックは美容皮膚科・内科・皮膚科・漢方内科を標榜していますが、それ以上に「とりあえず話してみる場所」でありたいと考えています。
お話を聞いた上で、当クリニックで診られるものは診ますし、専門医の対応が必要な場合は紹介状を書いてつなぎます。他院で手術を受けた後のフォローを当院でおこなうこともあります。
―最初にM’sクリニック南麻布に相談することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。
伊藤:いくつもの医療機関や診療科を転々と回ると、全体が見えにくくなることがあります。
体の一部分だけでなく、生活の状況や体調の全体像を踏まえて話を聞けることが、かかりつけ医としての利点だと思っています。
当クリニックには、長く通ってくださっている方が多くいらっしゃいます。
その方がどういう人生を歩んでこられたか、仕事は、家族構成はどうか——そうした背景がわかっていると、ケアの提案も変わってきます。
たとえば、お酒が好きで大切な息抜きだという方に禁酒だけを勧めるのは現実的ではありませんし、家族を養うために仕事が忙しい方に「もっと寝てください」と言っても難しい。
その人が取り組める範囲の代替案を、一緒に考えるようにしています。
診察は、お一人につき30分ほどの時間をかけてお話を伺っています。
同じ症状でも、年齢や体調、生活習慣、仕事、趣味など、背景は人それぞれ異なります。
その違いに応じてオーダーメイドで提案するためには、まず十分に話を聞くことが欠かせません。悩みや迷いを口に出すだけで、気持ちが軽くなることもあると感じています。
―家庭でのセルフケアについても指導されているそうですね。
伊藤:たとえば肌の症状なら、家でどのように洗えばよいか、保湿はどうするか、どの程度の状態なら受診したほうがよいかなど、そういったことをお伝えしています。
家でできることと、医療につなぐべきことを適切に理解していただくことが大切だと考えています。
―通いやすさという点で、工夫されていることはありますか。
伊藤:診療時間は18時までと、比較的遅い時間まで開けています。(※5)
仕事帰りに寄りたいという方も多いので、平日の日中に通うのが難しい方の受け皿になれればと思っています。
また、診察は完全予約制にしています。事前にご予約いただいた方を長くお待たせしないよう、時間配分には気を配っています。
私自身、医療機関にかかるときに待ち時間と診察時間のバランスが気になることがあるので、「自分が患者だったらどう感じるか」を考えながら運営しています。
※5:2026年5月インタビュー時点
男性も、多世代も。長く続く関係のかたち

―患者さんの層について教えてください。
伊藤:女性の方が多いですが、男性も少なくありません。
男性からも、シミが出てきた、肌の状態を良くしたい、脱毛をしたいといったご相談があります。
外見が気になってきたということは、体の内側にも変化が表れているサインであることが多いものです。
眠れなくなってきた、前より太りやすくなったといった生活の変化も、あわせて診ていきます。
―長くかかっている患者さんが多いそうですね。
伊藤:以前勤めていたクリニックの時代から、20年以上にわたって通ってくださっている方もいらっしゃいます。
30代で初めて来てくださっていた方が、50代・60代になられている。
その方のお子さんが来てくださることもありますし、そのお子さんが別の方を紹介してくださることもあります。
こうして、多世代にわたるお付き合いが続いています。ご夫婦での来院も少なくありません。
更年期、漢方処方。内外美容を支えるさまざまな対応

―更年期や女性特有の不調への対応について教えてください。
伊藤:更年期の症状は、肌の変化だけでなく、睡眠の乱れや気力の低下など多岐にわたります。
私は乳腺・甲状腺の診療経験があるので、ホルモンバランスからくる変化には、ホルモン補充療法、漢方処方、プラセンタ療法(自由診療)などを組み合わせながら対応しています。
私自身も更年期を経験したので、辛さはよくわかりますし、自分の経験を患者さんにお話しすることもあります。
もちろん、ひとつの方法を押しつけるのではなく、その方の生活スタイルに合ったやり方を一緒に考えます。
―漢方処方についてはどのようなお考えですか。
伊藤:漢方は保険診療として認められているので、積極的に使っています。
更年期の不調、睡眠の問題、むくみ、体のだるさなど、症状に合わせて処方しています。
患者さんによっては、カウンセリングと最小限の漢方薬だけで症状が穏やかになることもあります。
―自然療法も取り入れているそうですね。
伊藤:アメリカでホルモン補充療法を学んだことがきっかけで、自然療法にも取り組むようになりました。
栄養サプリメント療法や、プラセンタの注射・点滴(自由診療)などを取り入れています。
ほかにも、フランスのハーブを使ったトリートメントや、アロマテラピー、ハーブボールなどによるケアも対応しています。
アロマテラピストとしての視点も診療に生かしながら、西洋医学を土台にしつつ、補完代替医療をバランスよく組み合わせる。
それが「体の内と外からの抗老化医療」という当クリニックのコンセプトにつながっています。
未病の段階で体を整え、病気を防ぐという予防医学的な観点も大切にしています。
―鍼灸院との連携についても伺いました。
伊藤:近隣の鍼灸師の先生と連携し、鍼灸院に通っている患者さんのMRIを定期的に撮影し、整形外科的な治療が必要かどうかを医学的に確認しています。
見落としを防ぐため、西洋医学的な観点から病変がないかどうかを確認した上で、鍼灸に臨んでいただくという役割分担です。
鍼灸院の患者さんが当クリニックに来られることもあれば、当クリニックの患者さんが鍼灸院のお世話になることもあります。
たとえば五十肩のような症状で、整形外科では経過観察とされているケースでも、温熱や鍼灸で症状の負担が軽くなったと感じられる方もいます。
心身の健康をサポートする手段は、西洋医学だけではありません。
医学的な確認をしながら、さまざまな選択肢を活用していくことが大切だと考えています。
アジア、旅がテーマ「医療機関らしくない」を目指した空間

―クリニック内の雰囲気は、一般的な医療機関と随分違いますね。
伊藤:ちょっと友人のところに立ち寄って、気持ちが軽くなって帰る——そんな場所にしたいと思っていますので、医療機器以外の家具や内装は、あえてリラックスできるものを選んでいます。
テーマは「アジア・旅」で、部屋ごとに床やタイルも変えています。
スタッフも白衣ではなく、スクラブで対応しています。
2012年の移転を機に、内装をそれまでの南仏テイストから、アジアをテーマに替えました。
患者さんに緊張せず、居心地よく過ごしていただけるよう、細かい部分まで自分の好みをちりばめています。
全室個室ですので、ほかの方に話が聞こえることはありません。
リラックスして過ごし、受付のスタッフとも気軽に言葉を交わせる、そんな場所でありたいと思っています。
―南麻布という立地を選んだ理由はありますか。
伊藤:私にとって南麻布はとても居心地の良い街で、穏やかな空気が流れる場所だと感じています。
六本木や恵比寿に近いのに、外からの人の流入が少なく、飛行機の音に交じって鳥のさえずりが聞こえる、落ち着いた街なんです。
とても好きな街なので、どうしても南麻布の地で開院したいという思いがありました。
また、私は院内の風通しを重視しています。
以前、窓の開かない医療機関に勤務していたことがあるのですが、空気の流れが気になってしまいました。
その意味でも、この場所はとても気に入っています。
あくまでも最初は対面で、補助的にオンラインも活用したい

―オンライン診療も視野に入れていると伺いました。
伊藤:導入を検討していますが、初診からオンラインで対応するつもりはありません。(※6)
最初は対面でお会いして、その方の雰囲気を感じ取らないと、本当の相談内容を正確につかむことは難しいと考えています。
一度ご来院いただいて関係を築いた上で、多忙などで来られないときは経過をオンラインで確認する——そうした活用方法であれば意味があると思っています。
根気よく治療や生活改善に取り組むには、誰かにフォローされている状況が後押しとなります。
ご自身だけでは、どうしても継続が難しくなることもありますので、通院を継続しやすい仕組みを作ることが大切です。
こうしたフォローのためにオンラインを活用できればと考えています。
また、私は頭痛持ちなのですが、頭痛がひどくて外に出たくないときに処方箋を出してもらえたら有難いと感じているので、そうした使い方も考えています。
―オンライン診療を利用する際に注意したほうがよいことはありますか。
伊藤:画面越しでは判断が難しい症状も多くあります。
手で触れる、目で見る、直接話を聞く——対面でなければわからないことはたくさんあります。
オンラインは、あくまで補助的な手段として考えていただければと思います。
※6:2026年5月インタビュー時点
「そういえばここ、美容クリニックだったよね」と感じられる場所に

―お話を伺っていると、「美容クリニック」という言葉に収まらない、広い役割を持ったクリニックと感じます。
伊藤:当クリニックの患者さんは紹介でいらっしゃる方がほとんどですが、美容目的よりも「体のことを相談したい」「なんとなく気になることがある」という入口の方が多いです。
しばらく通っていただくうちに、「そういえばここは美容クリニックだったよね、じゃあシミも診てもらおうかな」という流れになることがよくあります。
美容「のみ」を目的にされている方が少ないことが当クリニックの特徴だと思っています。
美容皮膚科分野の診察はもちろん好きですし、やりがいもありますが、それだけが目的ではない関係性の患者さんが多いことを、私は嬉しく捉えています。
―患者さんとの関係づくりで意識していることはありますか。
伊藤:患者さんとは対等な関係でありたいと思っています。
「患者様」より「患者さん」として向き合いたいですし、私自身も「先生」や「院長」ではなく「まゆさん」と呼ばれることが多いんです。
治療のプランは専門家として私が立てますが、それを押しつけるのではなく、一緒に考えるパートナーのような関係でいたいと思っています。
もうひとつ意識しているのは、自分のことを話すことです。
一方的に「どうですか」と尋ねても、なかなか本音は出てきません。けれども私が「この前こんなことがあってね」と自分の話をすると、患者さんも自然に話してくださる。
これは医師になってすぐの頃に気づいたことで、ずっと大切にしています。
年齢や性別、立場に関係なく、さまざまな方と対等に話せることが、この仕事の面白さだと感じています。
「この程度で相談していいのかな」と迷う前に

―最後に、体や肌のことで迷っている方へメッセージをお願いします。
伊藤:「この程度で受診していいのかな」「こんなことを聞いていいのかな」と感じることもあるかもしれませんが、迷ったら、まず相談してください。
肌のことでも、体の不調でも、どの診療科に行けばいいかわからない状態でも構いません。
当クリニックで対応できないことであれば、より適した医療機関におつなぎします。
大切なのは、ひとりで抱え込まないことです。
体の内側と外側、その両方を見ながら、その人の生活に合ったケアを一緒に考える「かかりつけ医」として長く通っていただけることが、何よりの喜びです。
伊藤院長の話で印象的だったのは、広い意味の「内外美容」の考え方だ。肌のことなら皮膚科、更年期なら婦人科、体調不良なら内科——そう分けて考える方法もあるが、消化器外科での経験から体の内側と外側のつながりを体感的に知っている院長は、あえてその境界を引いていない。
紹介とリピーターのみで約20年の歴史を歩んできたスタンスも印象に残った。(2026年5月インタビュー時点)
過度な広告を出さず、派手な宣伝もしないが、だからこそ一人ひとりの患者さんと長く、深い関係を築くことができ、生活や背景を知った上で、現実的な提案ができる。
「そういえばここは美容クリニックだったよね」と言われるというエピソードが象徴するように、体や生活の相談をしているうちに、自然と美容に意識が向くようになる。
内面が整うことで美容に意識が向かい、美容に気を使えば内面も充実するという好循環が生まれる。
体の不調も美容の悩みも、何科に行けばいいかわからないことも、まず話してみる相手が必要だ。
M’sクリニック南麻布はそれができる場所として、南麻布の街に静かだが強い根を張っていると感じた。
M’sクリニック南麻布について

| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| クリニック名 | M’sクリニック南麻布 |
| 院長 | 伊藤 まゆ(いとう まゆ) |
| クリニック紹介 | 東京都港区南麻布にある美容皮膚科・内科・皮膚科・漢方内科クリニック。「体の内と外からの抗老化医療」をコンセプトに、肌の状態改善からシミ・シワへのケア、更年期・ホルモンバランスの相談、漢方処方、脱毛など幅広く対応(自由診療・保険診療あり)。かかりつけ医として長期的な健康管理もサポートする。 |
| 所在地 |
〒106-0047 東京都港区南麻布4-2-49 麻布サンパレス202 |
| アクセス | 東京メトロ日比谷線 広尾駅1番出口より徒歩約3分 |
| 電話番号 | 03-5475-6770 |
| 診療時間 |
11:00〜14:00、15:00〜18:00(月、火、木、金、土) 休診日:水、日、祝 ※臨時休診日あり |
| Webサイト | https://www.ms-clinic.net/ |
| ご予約 | 完全予約制 |