高齢化が進む日本で、健康寿命をいかに延ばすかは大きな課題となっている。
要支援や要介護に至る原因をたどると、関節疾患や骨折・転倒といった運動器の問題が上位を占める(※1)。
「動ける身体」をどう保つかは、年齢を問わず誰にとっても身近なテーマだ。
こうしたなか、北海道札幌市中央区の「Do-Clinic」は、手術だけに頼らない整形外科のかたちを模索し、運動機能に着目した診療を続けている。
医師の診断と理学療法士の評価を組み合わせ、リハビリテーションを治療の柱に据えていることを特徴としており、医療事務やメディカルコンシェルジュも含め、約30名のスタッフが連携する体制を整えてきた(※2)。
院長の道家孝幸氏は、スポーツドクターを志して整形外科の道に進み、数多くの手術を手がけるなかで、身体の動き方そのものに向き合う診療へと考えを深めてきたという。
その確信を診療の場で形にしたのが、2019年の開院だった。
乳幼児から高齢者まで、なぜこれほど幅広い世代が足を運ぶのか。
手術に頼り切らない診療は、どのように実現されているのだろう。
そしてその先に、道家氏は何を見据えているのか。
人の「動き」に向き合い続けてきた診療の、その根にある考えを聞いた。
※1:厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」
※2:2026年5月インタビュー時点、Do-Clinic調べ
※3:日本整形外科学会
手術を重ねた末にたどり着いた、「動き」を診るという視点

―まず、クリニックとして大切にしていることをお聞かせください。
道家:整形外科を標榜していますが、一般診療では、手術をせずに症状を立て直していくことを大切にしています。
私自身、これまで数多くの手術を手がけてきました。
ただ、続けるうちに、手術を要さないケースは少なくないのではないかと考えるようになりました。
たとえば膝では、レントゲンで関節の変形が見つかると、それが痛みの原因だと説明されることがあります。
ですが、変形があっても痛みを感じずに過ごしている患者さんは、たくさんいらっしゃいます。
だとすれば、変形があるから痛い、と単純に結びつけるのは、少し違うのではないかと感じていました。
私が専門にしてきた、肩の分野においても、加齢に伴って腱が傷んでいること自体は決して珍しくありません。
それでも痛みのない方は大勢いますし、手術で腱を修復しても、痛みや動きづらさが残ることもあります。
それからというもの、手術だけが唯一の答えではないのだろうと思うようになりました。
手術をせずに、理学療法士と協力しながら身体の動きを一つずつ見直していく保存的なアプローチを大切にしています。
正式な標榜ではありませんが、気持ちとしてはずっと「整形内科」のつもりで診ています。
手術に頼らず身体を立て直すこの姿勢こそが、当院の診療の根幹にあるものです。
アスリートに憧れた少年期と、診療観が一変した研修医時代

―先生がスポーツドクターを志すまでの歩みを、生い立ちからお聞かせください。
道家:父は医師で、母は専業主婦という家庭で育ちました。
ただ父の専門は消化器科で、整形外科とは縁がなかった上に、いわゆる仕事人間だったため父が家にいる記憶はほとんどなく、父が働く姿を見て育ったということもありません。
そのため、父が医師だから自分も医師に、という感覚は実のところそこまでありませんでした。
私自身がこの道を意識したきっかけは、スポーツです。
中学ではアルペンスキー、高校ではラグビーに打ち込み、怪我をして整形外科医やスポーツドクターのお世話になりました。
ちょうど高校3年のときが長野オリンピックで、金メダリストを支えるスポーツドクターの姿が紹介されているのを見て、自分もこうしてスポーツ選手を支えたいと強く思うようになりました。
整形外科を志す気持ちは、それ以来ずっと変わっていません。

―医師になられてから、診療に対する考え方が変わる転機があったとうかがいました。当時のことを教えてください。
道家:医師になった当初は、思い描いていたスポーツ医療とは少し違う現実がありました。
研修医のころはスポーツ選手を診る機会がほとんどなく、北海道の地方病院で骨折や高齢の患者さんの診療にあたる日々にやりがいを感じる一方、やりたかったこととのギャップも感じていました。
いざ中学生や高校生のスポーツ選手が外来に来ても、関節に変形があるわけではありません。
変形があるから手術、という従来の考え方では、目の前の選手に対して自分は何もできない。
そのことを痛感し、スポーツ医学とは何なのかと深く悩みました。
転機になったのは2013年です。
運動機能、つまり身体の動き方を重視して診療する医師のもとへ1週間の見学に行き、その考え方を間近で学びました。
そこで、動き方が崩れていることが痛みの原因になっているケースも多いと、自分自身でも実感できたのです。
アスリートを支えたいと願って飛び込んだ世界で、最終的にたどり着いたのが、動きを立て直すという診療でした。
ワールドカップの現場で得た、トップも高齢者も貫く一つの視点

―先生はラグビーワールドカップ2019日本大会でグランドドクターを務められています。どのような関わりだったのでしょうか。
道家:もともと北海道では、ラグビーの小さな大会でグランドドクターを長く務めてきました。
2019年に日本でワールドカップが開催されると決まったとき、札幌でも試合があるだろうと考え、何らかの形で関わりたいと思うようになりました。
ラグビーのグランドドクターには国際的な公認資格が必要で、その取得もかなり細かく定められています。
北海道でその資格を持つ医師がほとんどいなかったこともあり、ワールドカップでも担当する機会をいただきました。
私のポジションは、脳震盪を専門に診る立場です。
ラグビーでは脳震盪が大きなリスクになるため、その疑いがあれば速やかにチェックする役割を担っていました。
―トップアスリートを診る経験は、日々の一般診療にどのように生きていますか。
道家:スポーツ選手を診るときに意識しているのは運動機能ですが、これは一般の患者さんにもそのまま共通します。
プロ選手であろうと、高齢の方であろうと、運動をほとんどしない方であろうと、私が診ているところはほとんど同じです。
レベルの違いこそあれ、動きのバランスが崩れていることが痛みの原因になっている、という点は変わりません。
意外に思われるかもしれませんが、トップ選手でも体幹が安定せず、ぐらついていることは決して少なくありません。
高い運動能力を持っていても、不安定なまま動くからこそ、どこかに痛みが出てしまう。
そういった意味では、体幹までしっかり安定した状態でパフォーマンスを出すことができている人は、トップ選手のなかでも多くはないと感じています。
エコーで痛みの原因を見極め、その場でリハビリにつなぐ

―診療では超音波エコーを活用されていますが、どのようなことが分かるのでしょうか。
道家:超音波エコーは、整形外科にとって欠かせない道具の一つだと考えています。
従来はレントゲンやMRIが中心で、主に骨や関節を見てきましたが、エコーでは筋肉や靭帯、そしてその動きまで確認できます。
身体の動かし方、つまり運動機能の問題に目を向けるうえで、エコーは大きな強みになります。
どの部分で炎症が起きているのか、どこの動きが滞っているのかを画面で捉えながら、痛みの原因にアプローチすることができます。
そのうえでエコーを見ながら、原因となっている箇所にピンポイントで注射を行う方法も選択肢の一つとしています。
―エコーを使った診療のなかでも、貴院ならではの強みはどこにありますか。
道家:クリニックという規模を生かし、診察室のすぐ隣にリハビリ室を置いていることです。
そうすることで、医師である私自身がリハビリの場を回り、理学療法士と密にやり取りをすることができます。
たとえばリハビリの最中に、理学療法士が患者さんの動きを見て炎症や痛みの強い部分に気づいたり、改善が進みにくいと感じたりすれば、その場で診察室に相談が入ります。
すぐに対応してまたリハビリに戻れるため、一人ひとりの状態に応じたケアをきめ細かく続けることができます。
医師と理学療法士が同じ場で連携し、一人ひとりの治療にあたれること。
これが、当院の診療を支えています。
―痛みを繰り返さないために、どのようなことを大切にされていますか。
道家:痛みのある場所が、必ずしも原因の場所とは限らないと考えています。
たとえば膝が痛む患者さんでも、膝そのものに問題があるとは限りません。
足首がぐらついていたり、体幹が安定していなかったりして、結果として太ももの筋肉が硬くなり、膝に負担をかけていることが多いです。
ですから、痛むところを処置して痛みが取れたら終わりではありません。
原因となっている動きそのものに向き合い続けることが、長期的な身体のケアには欠かせないと考えています。
写真と独自システムで、患者自身の「気づき」を引き出す

―医療DXに力を入れ、独自のシステムを取り入れているとうかがいました。まず、その根底にある考えからお聞かせください。
道家:医療も、ある見方から考えれば一つのサービス業だと考えています。
どれだけ丁寧な医療を提供していても、2時間も3時間も待たせたうえで診察が3分では、患者さんに満足していただくのは難しいでしょう。
ですから、患者サービスにはまず力を入れています。
待合室の環境を整えることはもちろん、待ち時間を短くするための予約制や、会計を待たずに後から支払える後払いシステムも導入しました。
後払いについては、開院当初というかなり早い段階から取り入れています。
―リハビリの現場では、iPadを使った仕組みを活用されているそうですね。
道家:リハビリで身体の動きを見るうえでは、姿勢や動き方を患者さん自身に理解していただくことが欠かせません。
理学療法士の手によるリハビリで症状が和らいでも、ご自宅でのリハビリを続けていただかなければ、なかなか改善は定着しないからです。
そこで、理学療法士が一人1台のiPadを持ち、その場で姿勢を撮影して患者さんにお見せしています。
「ほら、ここで姿勢が崩れていますよ」と画面で示すと、ご自身の状態がはっきり伝わります。
変化を実感していただけると、患者さんはリハビリに前向きに取り組んでくださいます。
撮影した写真はそのままカルテにも記録できるため、患者さんの理解を深める道具であると同時に、診療の記録としても役立っています。
このカルテは開院当初から使い続けているもので、動きを可視化して共有できる点に大きな魅力を感じています。
約30名のスタッフが自ら考え、動く組織へ

―スタッフの教育やエンゲージメントに課題を感じているクリニックは少なくありません。約30名の組織(※4)をまとめるうえで、大切にされていることをお聞かせください。
道家:クリニックはどうしても、医師の想いが強く、それをスタッフに伝えていく形になりがちです。
ただ、スタッフの立場からすると、やらされているという感覚が大きくなってしまう面もあることも否定できません。
そこで私は、自分自身の考え方を少しずつ切り替え、幹部を中心にスタッフが自ら動けるような仕組みを作ってきました。
スタッフ主導の委員会やイベントをつくり、どうすれば患者さんにより喜んでいただけるかを、一人ひとりが自分で考えて動けるようになってほしいと願っています。
まだまだ課題は多く、途上の段階ではありますが、その方向を意識して組織づくりを進めています。
―2025年にミッションを定められたとうかがいました。どのような言葉に込めたのでしょうか。
道家:「動ける悦びを未来に届ける」という言葉を、ミッションとして掲げました。
普段なにげなく動けていることは、実はとてもありがたく、喜ばしいことです。
その動ける身体を、しっかりと改善・維持し、未来へ届けていきたい。
健康寿命を延ばすという私たちの願いと、患者さんの思いの根っこにあるものは同じです。
まさに、このミッションを組織に浸透させていく段階にあります。
たとえば、ミッションに沿った行動をとっているスタッフを年に1、2回表彰したり、ミッションを体現した行動にまつわるエピソードを全員で共有して讃え合ったりと、少しずつ取り組みを重ねているところです。
*4:2026年5月インタビュー時点、Do-Clinic調べ
あらゆる世代の「動き」に向き合う

―どのような患者さんが来院されるのでしょうか。年齢層や悩みの傾向をお聞かせください。
道家:当院には幅広い世代が来てくださいます。
後期高齢者の方は2割ほど(※5)で、多くは働く世代の方々です。
スポーツに打ち込む学生も来ますし、股関節の検診で訪れる赤ちゃんもいます。
0歳から100歳を超える方まで、年齢を問わず通っていただいています。
軽い症状の段階からリハビリで動きを整えることを目的に来院される方も多くいらっしゃいます。
―骨粗しょう症の診療にも力を入れていらっしゃると伺いました。
道家:リハビリと並ぶ、当院のもう一つの大きな柱が骨粗しょう症です。
骨粗しょう症は自覚症状が現れにくいため、一度検査を受けて、ご自身の数値を把握しておくことが大切です。
そして、薬だけで終わらせるのではなく、栄養や運動まで含めて支えていく必要があると考えています。
だからこそ、医師や理学療法士に加え、管理栄養士も交えたチームで向き合っています。
来院される患者さんはリハビリ目的の方が多い一方、骨粗しょう症のチーム医療にも力を入れています。
※5:2026年5月インタビュー時点、Do-Clinic調べ
リハビリのその先へ ― 予防と継続で、健康寿命を延ばす

―この先、力を入れていきたい取り組みについてお聞かせください。
道家:これまで重ねてきた診療に手応えを感じています。
これからは、想いを共にする医師やスタッフのさらなる育成を図り、その輪を広げていきます。
もう一つ、注力していきたいと考えているのは、リハビリを終えたあとの運動の継続です。
特に高齢の方の場合、クリニックで身体を整えても、その後に運動をする習慣が途絶えると、せっかく取り戻した機能が徐々に損なわれてしまうおそれがあります。
そこで2026年7月から、介護保険を用いて運動を続けられるデイケアサービスをクリニック内で始めました。
今後は世代を問わず、運動を続けられる場を整えていきたいと考えています。
さらにその手前、予防の段階にも目を向けています。
中学生や高校生の身体づくりや怪我の予防、栄養を含めた支援、あるいは幼児期に多様な動きを経験して運動発達を促す教室など、痛みが生じる前の段階から関われる仕組みを広げていけたらと考えています。
―治療の選択肢を広げるための取り組みについても、お聞かせください。
道家:医療は進歩を続け、治療の方法も更新されていきます。
その流れに目を配りながら力を入れている方法の一つが、動注治療です。
中高年の方の指の関節が変形して痛むヘバーデン結節は、多くの方が悩まされる症状です。
かつては使いすぎや加齢によるものとされ、痛み止めで様子を見るほかないと考えられてきました。
動注治療は、指へ向かう動脈に注射を行うことで、炎症へアプローチする方法です。
対処の難しかったこうした症状に対する、一つの選択肢になります。
ただし、これも数ある選択肢の一つにすぎません。
自由診療という位置づけでもあり、患者さん一人ひとりの状態を見極めながら、その方に合った方法を選んでいくことを大切にしています。
―最後に、受診を考えている地域の方へ、メッセージをお願いします。
道家:身体を動かすことに不安や困りごとを感じている方は、年齢を問わず、どなたでもご相談いただける場でありたいと思っています。
痛みが続いて思うように動けない、そんな状態に心当たりがあれば、一度足を運んでいただけたらと思います。
リハビリで動きを見つめ直すことが、その方の困りごとに向き合う糸口になることもあります。
もう一つお伝えしたいのが、骨粗しょう症です。
自覚症状が現れにくい病気ですので、一度検査を受け、ご自身の数値を把握しておくことをおすすめします。
動ける身体を保ち、健康寿命を延ばしていく。
高齢化が進む日本で、その一助となれるよう努めてまいります。

道家院長の言葉の端々から伝わってきたのは、痛む場所だけを診るのではなく、身体の動きそのものに向き合うことが、その人の暮らしを支える土台になるという信念だった。
膝にしても肩にしても、変形や損傷の有無だけで判断せず、動き方のどこに原因が潜んでいるのかを探っていく。
その視点は、プロのアスリートから100歳を超える高齢者まで、世代を問わず分け隔てなく注がれていた。
数多くの手術を手がけながらも手術だけを答えとせず、医師と理学療法士が同じ場で連携し、身体を立て直していく。
その姿勢は、スポーツ医学と日々の診療の双方に向き合ってきた道家院長だからこそたどり着いた、医療の形なのだろう。
「動ける悦びを未来に届ける」。
高齢化が進む日本において、Do-Clinicは運動機能という医学的な視点を重んじつつも、それと同じくらい、患者自身が身体を理解し、自らの足で動き続けられることを大切にしている。
整形外科の枠にとらわれず、動ける身体を未来へつないでいこうとするDo-Clinicの取り組みは、世代を問わずさまざまな人の一助になり得るものだろう。
Do-Clinicについて

| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| クリニック名 | Do-Clinic 整形・運動器リハビリテーション |
| 院長 | 道家 孝幸(どうけ たかゆき) |
| クリニック紹介 | 2019年6月開院。運動機能に着目し、リハビリテーションを治療の柱とする整形外科。医師と理学療法士が連携し、骨粗しょう症のチーム医療、肩関節の診断・治療、各種検診などにも取り組む。0歳から高齢者まで幅広い世代が受診している。 |
| 所在地 |
〒060-0061 北海道札幌市中央区南1条西14丁目291-81 ウィステリア南1条ビル3F |
| アクセス | 東西線「西18丁目」駅5番出口より徒歩5分 |
| 電話番号 | 011-222-3334 |
| 診療時間 |
月・水・金:9:00-12:30/13:45-18:00 火:14:30-20:00 木:9:00-12:30/13:45-19:00 土・日・祝:休診 |
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