「子どものことは、子どもの専門家に診せてほしい。発熱から、身長や発達の心配まで、どこに相談すればいいか迷うような体調の変化があれば、まずはかかりつけ医として気軽に相談してください。」
そう語るのは、茨城県神栖市にあるしょうのこどもクリニックの庄野哲夫院長だ。
熱が出た、身長がなかなか伸びない、思春期が早い気がする、落ち着いて座っていられない――子どもに表れる心配ごとはさまざまで、ひとつの症状だけで切り分けられないことも多い。
だからこそ庄野院長は、症状ごとに別々の診療科を回るのではなく、まず子どもを包括的に診られる小児科へ相談してほしいと訴える。
しょうのこどもクリニックは、風邪や喘息、便秘などの一般的な小児診療に加え、庄野院長の専門である小児内分泌(低身長や思春期、肥満など)の専門外来、そして発達相談まで、1つの診療所で受け止めている。
背景にあるのは、医師が足りない地域で子どもの医療を支えたいという思いだ。
医師が手薄な地域で、一般診療と専門性をどう両立させるのか。
そして「子どものことは、子どもの専門家に」という考えについて、庄野院長に話を聞いた。
2003年、順天堂大学医学部を卒業し、順天堂大学小児科学教室に入局。浦安市川市民病院(現 東京ベイ医療センター)、順天堂大学医学部附属順天堂医院、同附属浦安病院などで小児科の診療・研究に従事。2010年から神栖済生会病院 小児科 部長を務め、地域の小児医療に携わる。2022年12月、茨城県神栖市にしょうのこどもクリニックを開院。2025年4月より医療法人 神榮会 しょうのこどもクリニック 理事長・院長。
小児医療の専門医として「敷居は低く、幅広く」

―診療の中で大切にしていることをお聞かせください。
庄野:小児科は、風邪や胃腸炎など、何かあったときに受診する場所として大切な役割を担っています。
その上で当院では、一般的な小児診療と、私の専門である小児内分泌の専門外来、そして発達相談までを、同じ診療所で診られることを大切にしています。
身長が低い、思春期が早い気がする、落ち着いて座っていられない――どこに相談すればいいか分からないようなことも、まず小児科で受け止めたいと思っています。
―院内には恐竜のモチーフが多く、白衣も着ていらっしゃらないですね。
庄野:研修医のころから、白衣はほとんど着ていません。
パーカーやスクラブで診ています。子どもが病院を怖がらないように、という配慮です。
院内のあちこちに恐竜のイラストやフィギュア、レゴで作った恐竜を置いていて、当院のロゴにも恐竜を使っています。
緊張しやすい子どもの気持ちが、少しでも穏やかになればと思っています。
―小児科領域を幅広く診る背景には、地域の事情もあるのでしょうか。
庄野:神栖市が属する鹿行(ろっこう)地域は、県内でも医師が手薄な地域です。
データを見ると、茨城県は人口10万人あたりの医師数が全国ワースト2位で、県内を9つに分ける二次保健医療圏の間の差もあります。(※3)
なかでもこの鹿行地域は、人口あたりの医師数が県内でも少ない地域として挙げられます。(※4)
※3:厚生労働省「茨城県における地域医療構想の進捗について」(茨城県提出資料)
※4:厚生労働省「特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会」資料2-2(茨城県、2018年11月)。二次保健医療圏別の人口10万人あたり医師数は鹿行95.7人で、全国平均251.7人を大きく下回る
医師が足りない地域に小児科を

―小児科医を志したきっかけを教えてください。
庄野:幼少期に先天性の疾患で半年近く入院・手術を経験し、そのとき命を救ってくれた小児外科医の存在が、医師を志すきっかけになりました。
子どもだった自分を救ってもらったので、同じように子どもを助けたいという気持ちがあり、小児科医の道を選びました。
―もともと縁はなかったという神栖市に来られたのは、どのような経緯だったのでしょうか。
庄野:2010年に、この近くの中核病院に赴任したのが始まりです。
その病院には当時、小児科の入院体制がなく、小児科を一から立ち上げることが私のミッションでした。
内科の経験しかない看護師さんばかりで、小児の器具もほとんどない状況でしたので、まず人を、次に物を揃えていきました。
最終的には小児科医は5人まで増え、24時間365日、小児科医がいる体制を作れました。
一からの体制づくりは大変でしたが、後輩の先生や看護師も協力的で、チームにも恵まれました。
―そこから、ご自身で開業する方向へ進まれた経緯を教えてください。
庄野:24時間365日の体制を維持するということは、夜間の救急や当直の負担が医師にのしかかるということでもあります。
当時、当直は月に6〜8回ほどあり、夜間来院患者数も多かったため、このままでは若手や後輩たちがつぶれてしまう、と強く感じていました。
自ずと、地域の一次診療を担うクリニックの必要性を考えるようになりました。
軽い段階の子どもはそこで診て、必要な子どもだけを大きい病院に紹介するようにすれば、後輩たちも助かるし、地域医療全体の役にも立ちます。
こうして、総合病院に負担が集中するのを防ぎたいという思いから、小児科医が足りないこの地域に骨を埋めるつもりで、2022年に当院を開業しました。
専門外来としての小児内分泌。低身長・思春期・肥満の相談に対応

―ご専門である小児内分泌では、どのような相談が寄せられますか。
庄野:大学時代から、成長ホルモンや性ホルモンなど、子ども特有のホルモンのトラブルを専門にしてきました。
身長が低い、肥満が気になる、思春期が早く来た、生理が来た――そういうとき、どの診療科に行けばいいのか、保護者の方もわからないことが多く、婦人科に行っても「診られない」と断られてしまうこともあります。
そういう子どもたちの受け皿になれるよう、一般診療と専門外来の両方を、同じ診療所で受けられるのが、当院の特徴だと思っています。
―専門医の存在は、地域による偏りも大きいとうかがいました。
庄野:子どもの内分泌を専門に診られる医師は、全国的にも多くはありません。
日本小児内分泌学会が公開している名簿では、茨城県内で掲載されている内分泌代謝科(小児科)の専門医は5名ほどです。(※5)
その施設も水戸の県立こども病院や、つくば、県西の町などに分かれており、神栖市を含む鹿行地域で名簿に載っているのは私だけです。
小児内分泌分野に関わる症例の数そのものは、風邪などと比べれば多くはありませんが、患者さんの数に対して、診られる医師の数は不足しています。
専門医に診てもらおうとすると、行くだけで1時間も1時間半もかかってしまうという方もいる状況です。
―肥満や夜尿の相談も受けているそうですね。
庄野:たとえば肥満は、食生活や運動だけでなく、ほかの疾患や、ご家族の生活習慣、ストレス、睡眠不足など、さまざまな状況が影響します。
夜尿症もすぐにお子さんがどうこうなるというものではありませんが、基礎疾患が隠れている場合もありますし、夜尿症のお子さんを抱える親御さんのストレスは相当なものです。
それ以上にご本人の自尊心の低下も問題となることが多いです。
いずれの疾患も、背景を丁寧に探りながら、生活指導と必要な検査・治療を組み合わせ、子どもの発達段階や成長の過程まで踏まえて診ていくのが、小児科の専門外来だと考えています。
※5:日本小児内分泌学会「当学会に所属し、日本内分泌学会内分泌代謝科専門医の資格を持つ医師の名簿」(2026年6月16日更新)
「入口」としての発達相談

―発達面の相談も受けているとうかがいました。
庄野:落ち着いて座っていられない、ほかの子と同じように学習が進まない――そうした悩みはかなり多いのに、受け皿が少ない状況です。
理由はいくつかありますが、専門にしている医師がほとんどいないことがまず挙げられます。
私自身も発達そのものの専門家というわけではありません。
発達の問題を専門に扱う『発達専門医』という名称の資格は存在せず、多くの地域では小児神経専門医がその役割を担っているのが現状です。
また、発達に関する相談は、しっかり診ようとすると背景まで含めてお話を伺う必要があるので時間がかかり、その間にほかの患者さんを何人も診られなくなってしまう。
だから『大きな病院へ行ってください』となりがちなのですが、病院は半年待ちが当たり前で、それでは学年が変わってしまいます。
そのなかで、当院は発達診療の「入口」だと位置づけています。
当院の診療の範囲内でフォローアップが可能なケースは継続して診て、より専門的な検査や対応が必要なケースは専門の医療機関へつないでいます。
―地域の医師どうしの連携もあるそうですね。
庄野:茨城県は広いので、顔を合わせてミーティングできる機会は多くありませんが、発達を診ている県南の先生たちが、月に1回ほどオンラインで集まって情報を共有しています。
病院で発達を専門として扱っている先生も入ってくださっているので、『今度こういう子を先生のところに送ろうと思うのですが』などと相談できます。
―診察室の外でも、積極的に地域の子どもと関わっていらっしゃいます。
庄野:幼稚園や保育園、小学校の園医・校医を務めています。
2024年ごろからは神栖市の教育支援員として、お子さんの就学にあたって特別支援級や特別支援学校をどう考えるかを話し合う会にオブザーバーとして参加しています。
地域のなかで、子どもをいろいろな立場から見ていきたいと思っています。
待ち時間を抑える、診療所の工夫

―小児科医が少ない地域とのことですが、1日にどのくらいの患者さんが来院されるのでしょうか。
庄野:平時で1日90〜100名ほど、感染症が増える冬の繁忙期には140〜150名になります。(※6)
この数の患者さんを、ほぼ1人で診ています。
―多くの患者さんを1人で診るために、どんな工夫をされていますか。
庄野:繁忙期ですと、1人あたり3分ほどで、診察して、お話を聞いて、処方して説明して、とこなさなければなりません。
カルテを手作業で入力していた頃は、昼休みも終業後の時間もないような状態でしたが、音声入力システムを導入して大幅に効率化できました。
―待ち時間を抑える仕組みについても教えてください。
庄野:中心になっているのは完全予約制とWEB問診です。
急患については、前日までの予約枠と、0時に開く当日枠を併用します。
予約枠は『いつもの薬がほしい定期通院』『今日熱が出た』『身長・体重』『夜尿』などに分かれていて、枠ごとにひもづいた問診が届く。
保護者の方に来院前にWEBで問診を入れてもらうので、来院した段階ではもう問診が終わっている。
一言二言お話ししながらすぐ診察に入れて、なるべく院内の滞在時間を減らすようにしています。
これは体調の悪い患者さんに対しても必要な配慮だと考えています。
診察室は4室あり、うち2室は発熱などの患者さんのための隔離用です。
―スタッフ体制についてはいかがですか。
庄野:事務5名・看護師4名(半日勤務・時短勤務を含む)という体制です。(※6)
事務のうち1名は医師事務作業補助者として私の隣につき、音声認識システムの起動や処方の補助をしてくれます。
検査はすべて、きちんと教育を受けた看護師が担当していて、採血も、点滴の確保も、検査の機械を回すのも看護師です。
診察にも常に1人ついてもらいます。
毎日大勢の患者さんが来ますので、スムーズに診察を進めるうえで、スタッフにはとても助けられています。
以前に別の病院で一緒に働いていた看護師さんや事務員さんもいるなど、心強いスタッフたちです。
※6:2026年6月のインタビュー時点・しょうのこどもクリニック調べ
「不断前進」――学びと前進の人生

―資格の取得が趣味だとうかがいました。
庄野:色々な分野のことに興味があって、それが資格取得という形に表れているのだと思います。
ファイナンシャル・プランナー1級のほか、医療経営士、メンタルヘルス・マネジメント検定、世界遺産検定、漢字検定、海上特殊無線技士など、分野を問わずいろいろ取りました。
診療日も早朝4〜5時に起きてクリニックへ向かい、誰にも邪魔されない朝の時間に、医療面もアップデートするため、日々更新される医学論文を読むのが習慣です。
開業を機に、夜型から朝型に切り替えました。
―本業でも、それ以外でも、学びを怠らず前進しようとする姿勢が印象的ですが、人生哲学のようなものはありますか。
庄野:母校・順天堂大学の理念である『不断前進(ふだんぜんしん)』です。
現状に満足せず、常に高い目標を目指して努力し続ける、という意味で受け継がれている言葉です。
立ち止まることは、後退と同じだと思います。
世の中は進んでいますから。
医師としてというより、一人の人間として生きる上で、この言葉が自分の中に響いています。
医療の枠を超えて、地域の未来へ

―2026年6月に、医師向けのファイナンシャル・プランニング(FP)事業を始められました。どのような思いからでしょうか。
庄野:医師が元気でなければ、患者さんの幸せにもつながらない、という思いがあります。
大学病院の勤務医の収入は決して高くなく、生活のためにアルバイトをやめられない一方で、学会費や書籍代など出ていくお金も多い。
その経済的な懸念を少しでも低減できれば、大学に残って研究も臨床も深められる先生が増えて、ひいては日本の医療の質も上がるはずです。
よくあるFP事業は保険の販売に誘導しがちですが、私のところはどことも契約を結んでいないので、いただくのは相談料だけ。
透明性は高いと思いますし、医師が医師に相談するので、気心も知れています。
―地域医療については、今後どのような構想をお持ちですか。
庄野:直近で考えているのは病児・病後児保育です。
親御さんは、お子さんのことを気にかけながらも働かなくてはいけない。
病気のときでも預けられる場所があれば、と思います。
ただ、病児・病後児保育は利用児童数の変動が大きく、経営的に成り立ちにくいとされていて(※7)、多くは自治体の補助で運営されています。(※8)
自治体が首を縦に振ってくれないと始められない、というのが現実です。
さらに先の構想では、夜間・休日の小児一次救急や、軽い肺炎・軽度の脱水などを1〜2泊で受け入れられる短期入院の機能まで考えていますが、私1人の力では難しく、人的資源の確保が前提になります。
―そこまで地域医療に力を注ぐのは、なぜでしょうか。
庄野:子どもというのはかけがえのない存在、日本の、世界の宝だと思っています。
小児医療が手薄な地域では、子どもが慢性的な病気を抱えたときに、十分なフォローを受けにくい。
そうなると、その子の健康寿命が短くなって、将来、就きたい仕事に就けなくなることもある。
宝物を大切に育てていきたい、という想いは私だけではなく、万国共通でしょう。
※7:厚生労働省「保育環境改善等事業」行政事業レビュー資料(病児保育事業は利用児童数の変動が大きく、経営上の問題から事業に取り組みにくいとの指摘があり、利用児童数に影響されない運営費の補助を設けた)
※8:厚生労働省「病児・病後児保育について」(社会保障審議会少子化対策特別部会 資料)。病児・病後児保育は国・自治体の補助により運営される事業
情報を見極める目を。「子どものことは専門家」へ

―読者に向けて、クリニック選びのポイントはありますか。
庄野:その医師がどんな専門性を持っているのか、どんな経歴なのかなどは調べたうえでかかったほうがいいのかなと思います。
小児科が専門でなくても、子どもも診られますと標榜することはできますが、やはり子どものことは、子どもの専門家に診せてほしいと思います。
また、継続的に診ていく必要がある子の場合は、その医師に長く診てもらえそうかどうかも、ひとつの目安になると思います。
私はここに骨を埋めるつもりでおりますので、その思いも知っていただけると嬉しいです。
―一方で、ネットの情報にはデメリットもありそうです。
庄野:患者さんや保護者の方がご自身で調べ、信頼できる情報源を元に準備してくることは、もちろん良いことです。
ただ、ネットや人づてに聞いた情報で『この病気だと思うから、この薬をください』と思い込んでしまうことには、適切な医療の提供を妨げる大きなリスクがあります。
調べるのはいいですが、診断は専門家に委ねていただければと思います。
特に低身長などの領域では『これを飲めば◯◯』のような民間療法の広告が目につきます。
そうした商品が保護者の方の満足につながることはあっても、本質的な改善には結びつかないことが多い。
だからこそ、客観的な医療評価を優先してほしいと思っています。
庄野院長は、しょうのこどもクリニックを「子どもの体調不良を診る場所」にとどめず、子どもの健康全体を受け止める入口とすることで地域を支えている。
身長や思春期の心配は内分泌、発達の相談はまた別、と切り分ける考え方もある。
けれど、子どもの心配ごとは一つの部位だけで完結しないことが多い。
発熱、成長、発達、家庭の状況。生活全体の中で子どもを見ようとするとき、一般診療と専門外来を切れ目なく診る意味がわかる。
もう一つ際立ったのは、医師が足りない地域に身を置き続ける覚悟である。
勤務医時代に感じた当直の負担と、後輩を守りたいという思い。
また宝物である地域の子どもたちを守りたいという想い。
それが一次診療を担うクリニックの開業につながり、医師の働く環境を支えるFP事業にまで視野が広がっている。
「不断前進」を胸に学び続ける庄野院長の歩みは、神栖の小児医療を支え、変えようとしている。
気になることがあれば、ためらわず相談を。
それが、この街に骨を埋めると決めた小児科医からのメッセージだ。
しょうのこどもクリニックについて

| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| クリニック名 | 医療法人 神榮会 しょうのこどもクリニック |
| 院長 | 庄野 哲夫(しょうの てつお) |
| クリニック紹介 | 茨城県神栖市にある小児科クリニック。一般的な小児診療に加え、小児内分泌科(低身長・思春期・肥満など)、小児アレルギー科、小児皮膚科の専門外来、発達相談外来、予防接種、乳幼児健診などに対応。医師が足りない地域で、一般診療と専門性を両立し、子どもとご家族に寄り添う診療をおこなう。 |
| 所在地 |
〒314-0253 茨城県神栖市須田2340-186 |
| アクセス | 路線バス「ゆーぽーとはさき」バス停より徒歩約6分。無料駐車場30台あり(神栖市内に鉄道駅はなく、車での来院が中心)。 |
| 電話番号 | 0479-21-5377 |
| 診療時間 | 9:00〜12:00/14:00〜17:30(14:00〜14:30は乳児健診・予防接種のみ) 休診:木曜午後・土曜・日曜午後・祝日 |
| Webサイト | https://www.shono-kids.com/ |
| ご予約 | 完全WEB予約制(Webでのご予約が難しい場合はご連絡ください) |