子どもの体調の変化、子育ての不安、まず小児科に相談を。細部小児科クリニックが提唱する「かかりつけ小児科医」のありかた
「小児科は、子どもの総合診療の入口です。発熱、目やに、鼻水、肌のトラブル、耳の痛みなど、どこに相談すべきか迷うような体調の変化があれば、まずはかかりつけ医として気軽に相談してほしい。」
そう語るのは、東京都文京区根津にある細部小児科クリニックの細部千晴院長だ。
熱が出た、肌荒れやお肌のブツブツ、鼻が詰まって眠りにくそうにしている、目やにが出ている、耳を気にしている……赤ちゃんや子どもに表れる体調不良はさまざまで、ひとつの症状だけで切り分けられないことがある。だからこそ細部院長は、症状ごとに別々の診療科に行くのではなく、まず子ども全体を診られる小児科へ相談してほしいと訴える。
細部院長が診療の中心に置くのは、病気を診ることだけではない。赤ちゃんが生まれた直後の不安、家庭でのホームケア、診療科選びの迷い、思春期の悩み、保護者の体調や家庭環境まで含め、「子どもを育てる家族をどう支えるか」という視点である。
小児科を「子どもが風邪をひいたときだけ行く場所」ではなく、子育ての見通しを一緒に整える相談先としてどう機能させるのか。細部院長に、子育て支援への思いや、「まず小児科へ」という考えについて話を伺った。
1987年、藤田学園保健衛生大学(藤田医科大学)を卒業。名古屋市立大学小児科学教室、名古屋市立大学病院NICUで新生児医療に携わったのち、日本医科大学病院などで一般小児科の診療経験を積む。
2008年、東京都文京区根津に細部小児科クリニックを開業。ペリネイタルビジット、育児相談、思春期外来、発達相談など、小児科全般を広く診療する。また、文京区医師会での子育て支援セミナー、院内での「ひよこくらぶ」開催、「根津ひまわりサロン」など、診察室の外にも子育て支援の場を広げている。
著書・監修書に『この1冊であんしん はじめての育児事典』『「どうする?」がわかる 赤ちゃんと子どもの病気・ケガ ホームケアBOOK』など。NHK Eテレ『ハロー!ちびっこモンスター』医学監修も担当している。
細部小児科クリニックが重視する「子育て支援」

―細部小児科クリニックが、診療の中で特に大切にしていることをお聞かせください。
細部:一番伝えたいのは「子育て支援」です。
小児科クリニックは、熱が出た、咳が出た、感染症が心配など、何かあったときに受診する場所として、とても大切な役割を担っています。
その上で、私は症状だけを診るのではなく、子どもを育てているご家庭が、日々の不安や疑問を相談できる場所でありたいと思っています。
赤ちゃんが生まれると、ミルクの飲ませ方、吐き戻し、肌の状態、鼻水、発熱時の対応など、親御さんには次々と不安が出てきます。そうしたときに、どこに相談したらよいかわからないまま抱え込んでしまうことのないようにしたいのです。
だからこそ、当院では乳児健診やワクチンだけではなく、ペリネイタルビジット(出産前・出産後の小児保健指導)(※1)、育児相談などを通じて、親子の生活に寄り添う診療を大切にしています。
出産後にどのような心配ごとが起きやすいのか、ワクチン接種はどのように進めるのか、救急時はどこに相談すればよいのか。そうしたことを早い時期に知っておけば、親御さんが子どもを見守るときの見通しを持ちやすくなります。
産婦人科の家庭で育ち、赤ちゃんを診たいと思った

―小児科医を志したきっかけを教えてください。
細部:実家が産婦人科の開業医で、生まれたばかりの赤ちゃんを目にする機会が多かったことがきっかけです。
藤田学園保健衛生大学(藤田医科大学)を卒業後、NICU(新生児集中治療室)がある名古屋市立大学の小児科に入り、新生児医療を学びました。その後、結婚を機に上京し、日本医科大学病院で一般小児科の診療も経験しました。NICUで赤ちゃんを診た経験と、大学病院で一般小児科を診た経験の両方が、今の診療につながっていると思います。
―大学病院での勤務から、地域で開業する方向へ進まれたのはなぜでしょうか。
細部:大学病院では、病気の診断や治療を中心に診療します。それはとても大切な医療ですが、一方で、地域で子育てをしているご家庭には、もっと手前の悩みがあります。(※1)
ミルクのあげ方、ミルクの量、吐いたときの対応、熱が出たときにどうするか、パパとママの関係、祖父母との関わり方。そうしたことを含めて、手取り足取り支える小児科医でありたいと思いました。
私自身も、子育てでは戸惑いました。小児科医として赤ちゃんを診てきた私も、自分の子どもが生まれてすぐのころは、どのくらいミルクを飲ませればよいのか、吐いたときはどうすればよいのかなど、おおいに悩みました。
小児科専門医(日本小児科学会認定)である私でもそうだったので、初めて赤ちゃんを迎えたご家庭は、もっと不安だろうと思ったのです。
※1:株式会社 日本能率協会総合研究所 こども家庭庁委託事業 妊婦や乳幼児とその保護者を取り巻く生活実態調査

生後2か月を待たず、産後2週間から1か月の時期に関わる
―ペリネイタルビジットに力を入れている理由について、もう少し詳しく教えてください。
細部:赤ちゃんが生まれてから、生後2か月ごろになると、保健師さんや自治体から「ワクチンデビュー」の案内を受けると思います。
ですが、その前の産後2週間から1か月の時期がとても大変なのです。この時期は、授乳、ミルク、吐き戻し、肌のケア、鼻づまり、泣き方、眠り方など、親御さんが右も左もわからない時期です。ところが、その時期に医療的な視点で相談できる場所は少なく(※2)、私はそこを支えたいと思いました。
―赤ちゃんの症状は全身さまざまですが、まず小児科に駆け込んで良いのですね。
細部:たとえば、赤ちゃんの肌がカサカサしている、湿疹がある、顔が荒れているというときに、皮膚科へ連れていく親御さんもいます。
もちろん、専門医に診せることは悪いことではありませんが、小児科であれば、肌だけではなく、授乳、ワクチン、発熱時の対応、家庭での見守り方など、その時期の悩みについても一緒にお話しできます。
赤ちゃんのスキンケアは、家庭での洗い方や保湿の仕方、受診の目安を知っておくことが大切です。
保健師さんや助産師さんが支えてくださる部分もありますが、医療的な判断が必要な場合は小児科に相談してほしいと思っています。

―最初に小児科へ相談することで、どのような利点があるのでしょうか。
細部:もちろん、専門の診療科で診るべき症状もあります。ただ、最初からいろいろな診療科を回ると、子どもの全体像が見えにくくなることがあります。
小児科では、目やにだけ、鼻水だけ、肌だけを見るのではなく、その子の体調全体を見ます。
ワクチンは進んでいるか、熱が出たらどうするか、家庭でどのようにケアするか、必要なときにどこへ紹介するかまで考えます。その上で、当院で対応が難しい症状があれば、紹介状を書いて専門医に連携します。
小児科の「かかりつけ医」というのは、その子や家族の背景を知っている医師だと思います。急な症状だけをその場で診るのではなく、成長の過程、家庭の状況、これまでの病歴を踏まえて相談できることが大切です。
どの先生に相談すればよいかわからないときに、まず話せる場所があることが大事だと思います。
―家庭でできるケア、「ホームケア」を伝えることも重視されているのですね。
細部:熱が出たとき、吐いたとき、下痢をしたとき、鼻水が出たときに、家庭で何を見ればよいのか。逆に、どういう状態なら受診したほうがよいのか。そうしたことをお伝えしています。
家庭で抱え込んでくださいという意味ではありません。
むしろ反対で、家庭でできることと、医療につなぐべきことを分けて知っておくことが大切です。
それが、親御さんが子どもを見守る力につながると思っています。
病気を治すだけではなく、家庭でできること、医師が処置したほうがよいことを整理して伝えることも、小児科医の大事な仕事だと思っています。
※2:公益社団法人 母子保健推進会議 平成28年度 子ども・子育て支援推進調査研究事業「産前・産後の支援のあり方に関する調査研究報告書」
パパ・ママの風邪や花粉症も相談できる、家族ぐるみのかかりつけ医を目指す

―お子さんだけでなく、親御さんの相談も受けていると伺いました。
細部:当院は小児科ですので、大人の病気を何でも診るということではありませんが、パパやママの風邪、花粉症などであれば相談していただけます。
ご家族を丸ごと支えるという意味で、家族ぐるみのかかりつけ医でありたいと思っています。
たとえば、お子さんを連れてきた親御さんも風邪をひいている、花粉症で困っているという場合には相談していただけます。一方で、血圧が高い、循環器の病気が心配、専門的な検査が必要といった場合には、適切な医療機関を紹介します。
―家族全体を見守る視点があるのですね。
細部:子どもの体調と、家庭の状況は切り離せません。パパやママが疲れている、眠れていない、子育てのことで悩んでいる。
そうしたことが、子どもの受診の背景にあることもあります。
小児科であっても、子どものことだけを聞くのではなく、家庭全体の状況を把握することは大切です。
家族のことを相談できる医師がいると、必要なときに次の相談先につなぎやすくなります。

子育て支援のさまざまな取り組み
―診療以外にも、さまざまな子育て支援をおこなっていらっしゃいます。
細部:私が取り組んでいる子育て支援には、3つの柱があります。文京区医師会でおこなっている「子育て支援セミナー」、当院で開催している「ひよこくらぶ」、そして「根津ひまわりサロン」です。
「子育て支援セミナー」は、出産後のご家庭に向けて、感染症、ワクチン、ホームケア、育児の見通しなどを伝える場です。医師会の活動として続けることで、クリニックだけでは届きにくい方にも情報を届けたいと考えています。
「ひよこくらぶ」は、当院の待合室を開放して、親子で過ごしていただく場です。育児情報の資料を見たり、親御さん同士で話したり、子どもが遊んだりできるようにしています。
「根津ひまわりサロン」は、映画上映会などをおこなう地域の交流の場です。おじいちゃん・おばあちゃんを対象にした「孫育て講座」のような性格もあるイベントです。
私が考える子育て支援は、赤ちゃんとお母さんだけのものではありません。祖父母世代や地域の方も関わります。
高齢の方が赤ちゃんと関わり、親御さんが少し息をつけるような場が地域にあるとよいと思っています。地域の中で親子を支える場をつくることを重視しています。

思春期外来と発達相談。小さなころからの関係を生かす
―細部小児科クリニックでは、思春期外来や発達相談もおこなっています。小児科で思春期の相談を受ける意義をどのように考えていますか。
細部:小児科は、赤ちゃんだけを診る場所ではありません。小さなころから知っているお子さんが成長し、思春期に入ったときにも相談できる場所でありたいと思っています。
思春期には、体の変化だけでなく、学校、家庭、友人関係、気持ちの揺れなど、いろいろな悩みが出てきます。不登校、生理、ニキビ、親子関係の相談などもあります。そうしたときに、いきなり知らない医療機関に行くよりも、小さいころから知っている小児科なら話せることがあります。
―本人の話を聞くことも大切にされていますね。
細部:ある程度の年齢になったら、親御さんだけではなく、本人にも話を聞きます。いつから、何に困っているのか。本人がどう感じているのか。うまく話せないこともありますが、その様子も含めて見ていきます。
発達相談については、臨床心理士による相談枠もあります。
医師だけで抱えるのではなく、必要に応じて心理の専門職とも連携しながら、親御さんとお子さんの困りごとを整理していきます。
おもちゃがたくさん。子どもが過ごしやすい待合室

―自然光が入り、開放的な待合室が印象的です。おもちゃもたくさんありますね。
細部:院内には絵本やおもちゃをたくさん置いていて、お絵描きコーナー、ピアノなどもあり、お子さんには喜ばれています。
赤ちゃんや子どもは診察を待つ時間も緊張しますので、遊びながら待つことができるようにしています。
お子さんを遊ばせながら親御さんが一息ついたり、雑談したり、情報交換したりできる場も大切だと思っています。

赤ちゃんや子どものことは、検査でわかることも
―弱視スクリーニングや聴力検査にも対応しているそうですね。
細部:赤ちゃんや子どもは本人が言葉で説明できないため、特に目や耳の機能などは、家庭では気づきにくいことがあります。
見えているように、聞こえているように見えても、検査して初めてわかることもあります。

ホームケアを伝える著作多数、テレビ番組の医学監修も手がける
―細部先生は、書籍の監修やテレビ番組の医学監修にも関わっていらっしゃいます。
細部:熱が出たらどうするか、吐いたらどうするか、下痢のときは何を見ればよいか。
外来でお話ししているホームケアの内容を、家庭で確認できるようにまとめたものです。
当院の公式サイトでも、著書・監修書を紹介しています。
中でも『【改訂新版】この1冊であんしん はじめての育児事典(2023年、朝日新聞出版)』と『「どうする?」がわかる 赤ちゃんと子どもの病気・ケガ ホームケアBOOK(2022年、ナツメ社)』は、家庭でのホームケアを考えるうえで役立つ内容になっています。
―NHK Eテレ『ハロー!ちびっこモンスター』の医学監修についてもお聞かせください。
細部:テレビ番組や書籍の取り組みも、診察室とは違う形での子育て支援だと思っています。
家庭に届く情報が、できるだけ適切なものになるように関わっています。

オンライン診療にも対応
―オンライン診療も導入されています。どのような位置づけで考えていますか。
細部:小児科では、実際に見て、触って、診察しなければならない場面が多くあります。
熱がある、ぐったりしている、呼吸が苦しそうといった場合には、対面での診察が必要です。
一方で、育児相談や経過の確認、本を読んでいただいた方からの質問など、オンラインでお答えできることもあります。
オンライン診療は、対面診療の代わりというより、相談の入口だと考えています。
―オンライン診療を利用する際に、注意した方がよいことはありますか。
細部:オンラインで対応できる内容かどうかは、症状や相談内容によって変わります。
小児科では、画面越しの情報だけでは判断が難しいこともありますので、必要に応じて対面での受診をご案内します。
利用を希望される場合は、予約方法や対象となる相談内容を確認していただければと思います。

医療現場の声を届ける活動や、ワクチン接種の啓発にも携わる
―クリニックでの診療以外にも、医療団体での活動やワクチン啓発に関わっていると伺いました。
細部:私は、全国保険医団体連合会の理事・地域医療部長、東京保険医協会の副会長も務めています。
医療現場で起きていることや患者さん・市民の声を、国会議員や都議会議員などに届ける取り組みです。
日々の診療で感じることや患者さんの声を政治や行政の場に届けることも、医師としての役割の一つだと考えています。
地域で診療しているからこそ見える課題を、必要な場へ伝えていきたいと思っています。

―今年(2026年4月インタビュー時点)で17年目となる「ワクチンパレード」を開催予定です。
細部:「希望するすべての人たちにワクチンを」という思いで続けている活動です。
MRワクチンなど、必要なワクチンに関する情報を届けることは、子どもや地域を守ることにつながると考えています。
インターネット上には、ワクチンについてさまざまな情報があります。だからこそ、医療者として、確認された情報を届けることが必要だと思っています。

「このくらいで相談していいのかな」と迷う前に
―最後に、子育てに不安を感じている親御さんへメッセージをお願いします。
細部:「この程度で受診していいのかな」「こんなことを聞いていいのかな」と思うことがあるかもしれません。
でも、子どものことで迷ったら、まず小児科に相談してください。
もちろん、すべてを当院だけで診るわけではなく、必要があれば、専門の医療機関につなぎます。
大切なのは、親御さんが一人で抱え込まないことです。
赤ちゃんはもちろん、お父さん、お母さん、家族全体を見守ってくれる医師を選んでほしいと思います。
かかりつけ医は、困ったときに相談できる存在です。
家庭でできること、医療につなぐべきことを一緒に整理しながら、子育てを支えていければと思っています。

細部院長の話を通じて印象に残ったのは、小児科を「病気を診る場所」だけでなく、家庭で子どもを育てるための知識を手渡す場所として捉えている点だった。
目やになら眼科、鼻水や耳の痛みなら耳鼻科、肌のトラブルなら皮膚科……親御さんが症状ごとに受診先を変えるのは自然な考えともいえる。しかし、子どもの症状は一つの部位だけで完結しないことがある。発熱、授乳、睡眠、機嫌、ワクチン、家庭でのケア。生活全体の中で子どもを見ようとするとき、まず小児科に相談することの意味がわかる。
もう一つ際立ったのは、産後早期の家庭に対するまなざしである。生後2か月のワクチンデビューの前、産後2週間から1か月の時期に親御さんが感じる迷いや不安。細部院長自身の子育て経験が、その問題意識を支えていた。
ひよこくらぶ、子育て支援セミナー、根津ひまわりサロン、書籍や番組の監修。活動の形は複数あるが、根底にあるのは、親子が孤立しないための入口を地域の中に置くという考え方だ。
「こんなことで相談していいのか」と迷う前に、子どもの全体を知る小児科に話してみる。こうした意識の啓発が、社会から孤立し、不安に怯える親子を減らすことにつながるのではないだろうか。
細部小児科クリニックについて

| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| クリニック名 | 細部小児科クリニック |
| 院長 | 細部 千晴(ほそべ ちはる) |
| クリニック紹介 | 東京都文京区根津にある小児科クリニック。乳児健診、予防接種、育児相談、思春期外来、ペリネイタルビジット、発達相談、オンライン診療などに対応。地域の子育て支援にも取り組む。 |
| 所在地 |
〒113-0031 東京都文京区根津2-14-11 Tツインズビル2階 |
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