鼻水が止まらなければ耳鼻科へ、皮膚が荒れれば皮膚科へ──。
複数のアレルギー疾患を抱えた子どもを育てる保護者は、症状ごとに違う診療科を渡り歩く負担を、長らく当然のものとして受け入れてきた。
保護者と子どもの負担を減らしたい。
その思いから、帝京大学医学部附属病院で病棟医長を15年務めた小児科医・小山隆之氏が、大学病院での経験と日本アレルギー学会専門医としての知見を携え、開院したのが「キッズクリニックみーの」だ。
なぜ大学病院でのキャリアを離れ、地域のクリニックという選択をしたのか。
そして、複数の科にまたがるアレルギー診療を一つのクリニックで担うという発想は、どこから生まれたのか。
そこには、患者やその家族とともに治療に向き合ってきた過去と、小山院長が抱く、小児科医としての意義があった。
複数の医療機関を行き来しなくて済むように。アレルギー患者の選択肢を広げる

―まず、貴院の特徴について教えてください。
小山:小児科としての一般診療や予防接種、乳幼児健診といった基本的な診療を軸としながら、アレルギーの診療を強みとしているのが当院の特徴です。
アレルギーという病気は、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、気管支喘息など多岐にわたり、一人のお子様が、これらのうち複数を合併して発症していることも珍しくありません。
しかし、それぞれの疾患には、皮膚科、耳鼻科、眼科といった別々の専門科があります。
そうなると、保護者様はお子様を連れて、複数の医療機関を行き来しなければならなくなってしまいます。
学校や仕事で病院に行ける時間も限られていますし、予約をとってもスムーズに診察が進むとも限らない。
さらに、アレルギーが起きやすい体質そのものは一生続くため、年齢に応じたアレルギー診療が必要になり、通院だけでも大きな負担となることがあります。
そこで、お子様やご家族の不安・負担をできるだけ取り除けるよう、複数のアレルギー疾患の診療を、できる限り当院で一貫して診ることができる体制を整えています。
―一般診療では保護者の診察も行われていますが、まさにそれも家族全体の負担を軽くしたいとの思いからなのですね。
小山:はい、お子様と一緒に来院された保護者様にも、必要に応じて診察を行っています。
もともと要望が多かったことから始めたのですが、お子様も含めてご家族ごと診察ができるよう、より力を入れていきたいと考えています。

―アレルギーの中でも、食物アレルギーの診療に力を入れていらっしゃいますね。
小山:私が大学病院で取り組んできたのが、食物アレルギーの検査や負荷試験、治療でした。
近年、食物アレルギーの患者数が増えてきているなか(※1)、大学病院で食物経口負荷試験を受けようとすると、数ヶ月待ちになることも珍しくありません。
また、地域によっては負荷試験をしている病院が少なく、他の地域の病院まで足を運ばなければならないこともあります。
であれば、地域のクリニックで、スムーズに食物経口負荷試験を提供することができれば、患者様の選択肢が広がるのではないか。
その思いから、体制を整えています。
現在(※2)は、毎週火曜日の午後、一般外来とは別の専門外来として実施しています。
―舌下免疫療法にも対応されているそうですね。
小山:はい、当院ではスギ花粉およびダニを対象とした舌下免疫療法を行っています。
舌下免疫療法は5歳から適応となる治療で、毎日少量のアレルゲンを服用することで、長い時間をかけて体質そのものに働きかけていく治療法です。
ご相談いただいた際には、まずアレルゲンの確認のための検査を行ったうえで、お子様一人ひとりの状態に合わせて治療を始めていきます。
この浦和美園の地域は非常に自然が豊かな土地なのですが、それゆえに花粉などのアレルギーに悩まれているお子様も多くいらっしゃいます。
そのため、開院当初から舌下免疫療法の要望も多くいただいていたことから、当院でも対応することにしたのです。
また、お子様の治療を始められた保護者様から「自分も同じ治療を受けたい」というご要望もたくさんいただいており、こちらも保護者様への処方を行っています。
―開院の地を選んだ理由をお聞かせください。
小山:浦和美園という地を選んだのには、理由があります。
開発が進み、子育て世代が増えているこのエリアは、まさに小児医療の必要性が高まっている場所だと感じました。
豊かな自然と充実した生活環境が整う一方、食物アレルギーの負荷試験を受けられる医療機関が近隣に少ないという現状もあります。
この地域で、アレルギー医療をスムーズに受けられる選択肢を増やしたい。
それが、ここに開院した大きな動機のひとつです。
※1:一般社団法人日本アレルギー学会「アレルギー疾患の手引き」《2022年改訂版》
※2:2026年4月インタビュー時点
消化器から救急、そして小児科へ。一人の患者が変えたキャリア

―小山先生ご自身は、もともと小児科を志されていたのでしょうか。
小山:医師になった当初は内科に勤務しており、上司が消化器科の先生だったので、私もその分野に携わっていました。
患者様の治療方針を、内視鏡の所見と病理検査の結果を組み合わせて、外科の先生方とのカンファレンスで決めていく。
その過程で内視鏡に強い有用性を感じ、消化器の専門医になろうと考えていた時期がありました。
ところがある日、別の上司から「救急科に行かないか」と突然声をかけられたんです。
ちょうど『ER緊急救命室』というアメリカのドラマが日本で放映されていて、救急医療が注目を集めていた時代でした。
何も知らなかったものの、救急医療への関心から「やってみたい」と思い、二つ返事で行くと答えました。
それが、いま振り返ると人生の大きな分岐点でしたね。

―救急の現場では、どのような経験をされたのですか。
小山:配属されたのは東京大学救急科と日本医科大学千葉北総病院救急科でした。
三次救急の現場で、内科・外科を問わず、あらゆる疾患の患者様が運ばれてきました。
救急科の先生方は、患者様が診療ベッドに上がった瞬間からスタッフ全員に的確な指示を出し、迅速かつ適切な処置を目指して診療を行っていきます。
それまでは内科で、救急科に比べればゆるやかな時間が流れていたなかで診療をしていた私にとって、1分1秒が勝負という救急の世界は、まったく別の景色でした。
そこで強く感じたのが、「全身を診られる医者になりたい」ということでした。
全身を診る医者こそが、私が理想とする医者の姿ではないかと。
ただ、救急科の先生方は外科系にバックグラウンドを持つ方が多く、かつ私の性格的にも外科はあまり向いていないと思ったんです。
そこで、外科以外で全身を診られる科は何かと考え、たどり着いたのが小児科でした。
小児科は、全身を診られるうえに、成人科にはない「成長と発達」の過程を間近で見られる科です。
これが私にとっては目から鱗で、再び大学病院に戻り、小児科に入局しました。

―そこから、なぜアレルギーを専門にされたのでしょうか。
小山:一人の患者様との出会いがきっかけです。
東京大学小児科に入局したあと赴任した青梅市立総合病院で、全身性エリテマトーデスを発症したお子様に出会いました。
子どもが全身性エリテマトーデスを発症するというのは、当時も今も非常に稀なケースです。(※3)
体の免疫が自分自身の細胞を攻撃してしまう病気で、心臓をはじめ全身のあらゆる臓器に影響が及びます。
服用する薬の種類も多く、副作用もあるので、病気と副作用の治療が並行するなど、お子様にも保護者様にも負担が大きく、いろいろな葛藤を抱えていらっしゃいました。
医師として、患者様やご家族のその葛藤に寄り添いながら一緒に病気と向き合っていく。
その過程で私自身も本当にたくさんのことを学ばせていただき、「全身だけでなくその周囲まで診ることのできる医師になりたい」と心を定めました。
そして、自己免疫疾患である全身性エリテマトーデスとアレルギーが関連する分野であったため、アレルギーの専門医への道に進むことを決めたんです。
一人の患者様との出会いが私の人生を大きく変えてくれました。

―その後、クリニックを開院した経緯を教えてください。
小山:私は大学病院で15年間、病棟医長を務めていたのですが、その仕事の一つに、地域のクリニックから紹介されてきた患者様への対応がありました。
紹介を受けて専門的な治療をし、症状が改善したらまた地域のクリニックにお返しする。
そして、年に何度か地域のクリニックの先生方と会う機会があり、「あの患者さんはここまで改善しましたよ」といったお話を聞く。
これに大きな喜びとやりがいを感じており、その経験を重ねるうちに、「もっと自分も地域に近いところで、患者様やご家族と向き合いたい」という気持ちが強くなり、クリニックを開院することを決めました。
※3:小児慢性特定疾病情報センターでは、全身性エリテマトーデスの小児有病率は、小児人口10万人当たり3.9〜4.7人と報告されている。
ゴールを決めて伴走する。成長や変化に寄り添う診療スタイル
―診療において、最も大切にされていることは何でしょうか。
小山:アレルギー疾患は、症状が改善するまでに時間がかかることが多い病気です。
ですから、最初に患者様と保護者様と一緒に、アレルギーの治療における「ゴール」を決めるようにしています。
たとえば「保育園や学校で給食をみんなと一緒に食べられるようになりたい」など、最終的にどうなりたいのかを決めたうえで、相談しながら一緒に治療を進めていくのです。
ただ、そのゴールを決めても、実際の診療の過程ではさまざまな葛藤が出てきますし、患者様によって治療にかかる時間も異なります。
そういうときに、ゴールまでの距離を測りながら、どのような課題があるのか、どう治療を進めていくかを一緒に考えながら治療に伴走する。
それが、私の診療スタイルです。
―ゴールに向けて、患者様にはどのように伴走していますか?
小山:疾患や病状はお子様によって異なります。
そのため、伴走の仕方も、お子様一人ひとりの病状やライフスタイルに合わせて変えていく必要があります。
たとえば、受診の頻度ひとつをとっても、画一的に「月に一度来てください」とはなりません。
中学生・高校生になって学業や部活で忙しくなれば、病状やお子様の生活スタイルに合わせて、そのつど一緒に考えながら決めていきます。
ご家族の状況も踏まえながら、無理なく続けられる形を探していくことが、治療に伴走するうえでとても大切なことだと思っています。
また、当院では18歳まで診療を行っています。
以前は高校生になると内科へ移行するケースが多かったのですが、複数の疾患を抱えるお子様がうまく移行できず、小児科に戻ってくることがありました。
慣れ親しんだ医師のもとで、成長とともに、納得できるタイミングで次のステップに進めることが大切だと考えています。
成長とともに変化するお子様の状態に寄り添いながら、18歳までしっかり伴走していきたいと思っています。

―これまでに印象に残っているエピソードがあれば、教えていただけますか。
小山:大学病院時代に、牛乳アレルギーを持つお子様を診ていました。
そのお子様は、「牛乳を飲めるようになったら、アイスクリームを食べたい」というゴールを決めていて、それを目指して二人三脚で歩んできました。
お子様ご本人も保護者様も、なんとか飲めるようになりたいという強い気持ちを持ち続けていらっしゃって、根気強く治療を続けていきました。
そうして数年後、最終的に治療を終えて、ご家族と一緒にアイスクリームを味わう時間を持つことができたんです。
これは本当に印象深い経験です。

―小児科だからこそ見れる景色とは、どんなものだと感じていますか。
小山:やはり、年齢による成長や発達というのは、ほかの科では見られない景色だと思います。
生まれてから、寝返りをして、座って、ハイハイして立つ姿を見て。
立ったり歩いたりするペースは子どもによって違うなかで、保護者様が抱える不安を解消して。
その後、思春期を迎えて、身長が伸びたり体型が変化したりしていくなかで「自分の発達は大丈夫なのかな」といった悩み事が出てきて。
それを聞いて、医師の立場からお話しすることで、お子様本人や保護者様の心が軽くなったり。
そうしてお子様の成長やご家族に寄り添っていくことができるのは、小児科だけだと思います。
「敷居のないクリニック」へ。気軽にいつでも頼れる場所を目指して

―患者や保護者にとって、どのようなクリニックでありたいですか。
小山:困った時にすぐに頼れて、助けられる存在でありたいと思っています。
来院される保護者様の中には、「こんなことで来ていいのか迷った」「こんなことで、すみません」とおっしゃる方がいらっしゃいます。
でも、ここは大学病院ではありませんから、ぜひ気軽に来ていただきたいのです。
子どもは、風邪や病気になったときだけでなく、成長や発達に伴って身体的・心理的にも悩みごとや困りごとが出てきて、それに保護者様も悩むことがあると思います。
そういうときに、「ちょっとしたことだから」とためらわず、小さな悩み事でもいいので当院に来て話を聞かせてほしいです。
むしろ、「敷居がない」くらいに頼ってほしいと思っています。
また、子どもは前触れもなしに突然熱を出すことがありますよね。
当院は基本は予約制ですが、急な発熱を起こしたお子様は予約なしで当日診療を受けることができます。
このように、いつでも頼れる体制をこれからも整えていき、困ったときにすぐに助けられる存在でありたいです。

―「敷居のないクリニック」を目指す上で、大切にしていることはありますか。
小山:スタッフ全員が共有しているモットーは「思いやり」です。
来院されたお子様の病状や心情をくみ取り、保護者様にも寄り添って、丁寧に対応することを大切にしています。
また、お子様が「病院は怖くない」と感じてもらえるよう、院内の雰囲気作りも工夫しています。
患者様を温かく迎え入れられるよう、少しでも心が明るくなり、和むように可愛らしい壁紙にしたり。
また、お子様の恐怖や不安を少しでも軽くできるよう、おもちゃや人形を置いたり。
ちょっとしたことかもしれませんが、これを触ってもらうだけでリラックスできたり、泣き止んだり、帰る時には笑顔になっていたりするんですよ。


―小児科医として、どのような意義を感じながら患者や家族と向き合っていますか。
小山:治療におけるゴールがあるとはいえ、お子様の人生はその先まだまだ続いていきます。
ですから、「将来との橋渡し」こそが私の役割であり、大きな意義だと思うのです。
幼少期からずっと見てきて、小児科を卒業する18歳になり、「大学に受かりました」と聞いたり、その後「看護師になりました」と聞いたり。
その子どもが大人になっていく過程で、何か成長の支えや手助けができたのかなと思うと、とても嬉しくやりがいを感じますし、そういう瞬間がとても好きだなと思います。

―今後のビジョンを教えてください。
小山:当院がある浦和美園は、自然が豊かで、スポーツの拠点もあり、子育て世代の方々がますます増えていく地域だと思います。
そんな素晴らしい地域で開院した以上、まずは地域のお子様と保護者様の心と身体が常に健康であるような診療を、しっかり提供していきたいです。
そして、アレルギー疾患をお持ちのお子様と保護者様が、複数の医療機関を行き来しなくても、当院で一貫して診ることができる体制を引き続き整え、提供していきたいと思います。
それから、クリニックは病気を診る場所であると同時に、いつしか地域の方々が「集える場所」になっていけばいいなとも思っています。
子どもが同じ幼稚園や小学校のお母さん同士が、待合室で話したり、ちょっとした悩み事を解消しあったり。
実現するのには時間がかかると思いますが、当院がそういう場として機能できれば、これほど嬉しいことはありません。

―最後に、不安を抱えながら子育てをされている保護者の方へ、メッセージをお願いします。
小山:お子様の成長や発達は、保護者様に大きな感動や喜びを与えてくれるものだと思います。
ただ、時として、悩みをもたらすこともあり、それは病気やアレルギーだけではなく、心理的な面や、発達のこと、生活のこと、本当に多岐にわたります。
私のクリニックには、何の敷居もありませんので、お子様の病気だけでなく、保護者様のふとした悩みごとでも、気軽に立ち寄っていただける、そんな身近な存在として頼っていただきたいです。
ゴールを設定し、患者と家族と共に、将来を見据えて共に歩んでいく。
それは、小児科医として成長・発達を見守る存在だからこその、長い時間軸の伴走型の医療である。
そしてそのスタイルは、「複数のアレルギー疾患を一貫して診る」というクリニックのコンセプトとも地続きだ。
アレルギー治療は時間がかかることも多いからこそ、年齢を重ねて疾患の様相が変わっていっても、ずっと同じ医師が治療に伴走する。
疾患を抱える子どもにとってもその保護者にとっても、心強い存在だろう。
敷居のないクリニックを目指して、地域の小児医療の在り方を模索する小山院長。
いつでも頼れる場所としてひらかれている同院は、今後ますます多くの患者と家族を支え、思いやりとともに地域を温かく見守る存在となるだろう。
医療法人社団 千歳会 キッズクリニックみーのについて

| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| クリニック名 | 医療法人社団 千歳会 キッズクリニックみーの |
| 院長 | 小山 隆之(こやま たかゆき) |
| クリニック紹介 | 2025年6月、埼玉高速鉄道・浦和美園駅前に開院した小児科・アレルギー科のクリニック。日本アレルギー学会専門医である院長のもと、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、食物アレルギー、気管支喘息など、複数のアレルギー疾患を一つのクリニックで総合的に診療できる体制を整えている。毎週火曜日午後には食物経口負荷試験の専門外来を実施。スギ花粉・ダニの舌下免疫療法は保護者への対応も行う。一般診療、予防接種、乳幼児健診を含めた地域のクリニックとして、高校3年生まで幅広い年齢層を診療する。 |
| 所在地 |
〒336-0967 埼玉県さいたま市緑区美園4-10-1 シモンイースト美園1階 |
| アクセス | 埼玉高速鉄道・埼玉スタジアム線「浦和美園駅」徒歩1分 |
| 電話番号 | 048-621-6011 |
| 診療時間 |
〈一般診療〉 月・火・水・金 9:00~12:00/15:30~18:30、土 9:00~13:00/16:30~18:30 〈予防接種・乳幼児健診(予約制)〉 月・火・水・金 14:30~15:30、土 15:30~16:30 休診日 木曜・日曜・祝日(※日曜は不定期に診療あり) |
| Webサイト | https://kids-clinic-meeno.com/ |
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