鼻づまりが何か月も続いている。子どもが中耳炎をくり返している。
「大きな病院に行くほどのことだろうか」と迷ったまま、近所のクリニックへの通院や市販薬の服用を続けている人は少なくないだろう。
大阪府和泉市の「耳鼻咽喉科サージクリニック老木医院」は、耳・鼻・ノドの外来診療に加えて、日帰り・短期入院での手術に対応する有床診療所だ。
理事長を務める老木浩之医師は、近畿大学医学部を卒業後、勤務医として耳鼻咽喉科の診療と手術に携わり、2001年12月に同院を開院した。
「高度な医療や手術は大きな病院で受けるもの」という見方を変えたいという思いから開院に至った経緯と、力を入れるアレルギー性鼻炎の治療、院内の空間づくりまでを聞いた。
専門的な医療を身近に。外来から手術・入院まで対応

ーはじめに、老木医院がどのような医療機関なのか教えてください。
老木:耳・鼻・ノドの外来診療とあわせて、手術と入院までを院内で担っている、耳鼻咽喉科の有床診療所です。
中耳炎や副鼻腔炎(蓄膿症)、アレルギー性鼻炎、鼻中隔湾曲症、声帯ポリープ、サーファーズイヤー(外耳道外骨腫)など、耳・鼻・ノドの良性疾患の手術を中心に扱っています。
「良性疾患」と区切っているのは、がんなどの悪性疾患は、専門の設備と長期の入院が必要になるため当院では扱わず、連携先の病院にご紹介しているからです。
守備範囲を耳・鼻・ノドの良性疾患に絞っているぶん、医師もスタッフも、その領域の経験を深めやすい体制だと考えています。
ー「手術は大きな病院で受けるもの」というイメージを持っている読者もいると思います。
老木:まさにそのイメージを変えたくて、この医院をつくりました。
「高度な医療や手術は大きな病院で受けるのが普通で、開業医には通院で診てもらう」。
そういう無意識が、患者さんにも、残念ながら私たち医療従事者にも根づいています。
けれども、近くて気軽に通えるのが街の医院です。
街の医院で、手術まで受けられるようになれば、患者さんの負担はずっと軽くなるはずです。
「私たちが日本の耳鼻科をよくする」という気概を持って、2001年12月に開業しました。
専門的な医療を提供していることはもちろん、次の予約が数か月先ということもなく、院内での待ち時間も長くなく、検査の結果もすぐに出ます。
開院の翌年から手術に積極的に取り組み、2025年末までの手術数は8,968件になりました(※2)。
2025年の1年間では530件の手術をおこなっています(※2)。
※2:2025年末時点、老木医院調べ。出典:老木医院「手術実績」
全身麻酔・1泊入院を基本とする短期滞在手術

ー「短期滞在手術」とは、どのような手術の受け方なのでしょうか。
老木:日帰り、または数日までの短期入院で受けていただく手術のことです。
鼓膜の切開など、一部の手術は日帰りで対応していますが、鼻の手術の場合は全身麻酔でおこない、1泊から2泊の入院を基本としています。
日帰りの手術をご希望される方もいらっしゃいますが、全身麻酔の手術については、少なくともひと晩は院内で経過を見るべきだというのが当院の考えです。
術後は容体が変化する可能性がありますから、夜間も看護師が常駐する院内でお休みいただき、翌朝の診察を経てご帰宅いただきます。
ー局所麻酔ではなく、全身麻酔を選んでいる理由はありますか。
老木:局所麻酔では意識があるぶん、手術中の音や感触が伝わって、患者さんに緊張と負担がかかります。
全身麻酔なら、眠っている間に手術が終わります。
もちろん全身麻酔にもリスクはありますので、術前の検査と説明を丁寧におこない、手術の際は麻酔科医が麻酔を担当します。
退院の際には緊急連絡先をお伝えし、退院日の夜には当院からお電話を差し上げて、状態を確認しています。
経過観察が必要な場合は次回の予約をお取りしてお帰りいただき、術後も長く経過を診ていきます。
検査から治療方針の決定まで、院内で完結

ー受診してから手術までは、どのような流れで進むのでしょうか。
老木:院内にCTがあるので、たとえば鼻づまりでお困りの方なら、初診の当日に撮影して、その場で画像をご覧いただきながら状態をご説明できます。
そのうえで、お薬で様子を見るのか、手術を検討するのか、方針をその日のうちにご相談できます。
聴力検査は、部屋そのものを防音仕様にした検査室でおこなっています。
検査のために日を改めていただくことが少なく、通院の回数を抑えられる場合があります。
ー手術を迷っている段階でも、相談はできますか。
老木:はい、できます。鼻の手術については「鼻の手術相談外来」を設けています。
はじめに看護師が症状やご不安をうかがい、そのあと医師が診察と必要な検査をおこなって、手術が必要か、他の治療でよいのかの目安を当日ご案内します。
手術を受けるかどうかを決めてから来ていただく必要はなく、話を聞くだけの受診でも構いません。
アレルギー性鼻炎には幅広い選択肢を用意

ー耳鼻科の主要な疾患であるアレルギー性鼻炎の治療について教えてください。
老木:アレルギー性鼻炎の治療はこの10年ほどで進歩しているのに、それが患者さんに伝わっていません。
2019年の全国調査では、アレルギー性鼻炎全体の有病率は49.2%、スギ花粉症は38.8%と報告されています(※3)。
これだけ身近な病気なのに、症状があっても医療機関を受診せず、市販薬でしのいでいる方が目立ちます。
受診されている方でも、処方が抗ヒスタミン薬だけにとどまっているケースがよくあります。
抗ヒスタミン薬が合わない、効きが物足りないという方にも、その先の選択肢があります。
それを知っていただきたいと思っています。
ー具体的には、どのような治療の選択肢があるのでしょうか。
老木:まず、スギ花粉やダニのアレルギーに対する舌下免疫療法です。
アレルギーの原因物質を含む薬を毎日舌の下に含んで、体を少しずつ慣らしていく保険診療の治療で、数年単位で続けていただきます。
それから、ゾレア(一般名オマリズマブ)という注射薬があります。
重症のスギ花粉症で、既存の治療で十分な効果が得られない場合に、条件を満たせば保険診療で受けられます。
投与には検査を含めた条件があり、対応できる医療機関も限られていますので、詳しくは診察でご確認ください(※4)。
そして手術です。
鼻の粘膜にレーザーを当てる手術から、鼻水やくしゃみに関わる神経を切る後鼻神経切除術、鼻の通りを妨げる鼻中隔湾曲症の手術まで、症状と生活に合わせて選べます。
診療ガイドラインに示されているアレルギー性鼻炎の治療を、一通り院内でそろえています。
指先からの少量の血液で原因を調べられるアレルギー検査も導入していますので、まず検査から始めることもできます。
選択肢を並べたうえで、その方に合う治療を一緒に探していけるのが当院の持ち味です。
※3:松原篤ほか「鼻アレルギーの全国疫学調査2019(1998年、2008年との比較):速報―耳鼻咽喉科医およびその家族を対象として―」日本耳鼻咽喉科学会会報123巻6号、2020年
※4:舌下免疫療法、ゾレア(一般名オマリズマブ)はいずれも保険診療の対象。適応となる条件や起こりうる副作用は治療ごとに異なるため、詳細は診察時に医師の説明を受けたうえで判断すること。出典:老木医院「舌下免疫療法」、老木医院「ゾレア(抗IgE抗体)による治療」
「なんとかあきらめない」「患者さんと一緒に考える」

ー診療で大切にしている姿勢を教えてください。
老木:当院のモットーは「ジタバタする医療」です。
においがわからない、舌が痛い、頑固な耳鳴りが続くといった、治療が難しいとされる症状でも、「なんとかあきらめない」「患者さんと一緒に考える」を合言葉に、ジタバタと手を尽くしたいと考えています。
とはいえ、自己流であやしげな治療をするわけではありません。
患者さんの背景を把握したうえで、文献にあたり、科学的な根拠のある治療を進めていきます。
ー手術をすすめる場面では、どのような説明を心がけていますか。
老木:手術を受けるか受けないかを最終的に決めるのは、あくまでも患者さんとご家族です。
私たちの役割は、そのための判断材料をきちんと提示することだと考えています。
手術のメリットだけでなくデメリットも、手術を受けない場合にどのような治療があるのかも、あわせてお話しします。
お薬についても、期待できることと、必ず効くとは限らないことの両方をお伝えします。
納得して選んでいただくことが、治療を続けるうえでの土台になると思っています。
耳・鼻・ノドで専門の異なる、4名の常勤医

ー医師の体制について教えてください。
老木:常勤医4名の体制です(※5)。
それぞれ専門の領域が異なります。
私は鼻の診療に加えて、中耳炎、なかでも滲出性中耳炎を長年のテーマにしてきました。
副院長の田邉牧人医師は京都大学医学部の出身で、中耳の手術を担当しています。
院内に「大阪中耳サージセンター」という中耳手術の部門を置いていて、大阪府外の医療機関からご紹介いただいた患者さんも手術を受けに来られます。
中西悠医師は宮崎大学の出身で、耳の手術に加えて、サーフィン愛好家に起こりやすいサーファーズイヤーの診療に取り組み、その解説サイトも運営しています。
いびきや睡眠時無呼吸症候群の診療も担当し、抗加齢医学も学んできました。
サーファーズイヤーの手術では、遠方や海外からお越しになる方もいらっしゃいます。
また、中西医師は和泉中央駅直結の分院「はるか耳鼻咽喉科」の院長も務めています。
分院は通学やお仕事の行き帰りに受診しやすい立地で、手術が必要な場合は当院と連携して診療します。
竹田将一郎医師は愛媛大学の出身で、スウェーデンのカロリンスカ研究所で客員研究員を務めた経験があります。
当院では鼻の手術を中心に担当しています。
ー担当医やスタッフ間の連携はどのようにされていますか。
老木:カルテと院内のミーティングで情報を共有して、担当医が替わっても治療の方針が途切れないようにしています。
医師それぞれの専門を持ち寄れるのは、複数医師の体制ならではだと思います。
※5:2026年7月インタビュー時点、老木医院「医院紹介」による
自ら選定し、快適に過ごせる空間づくり

ー院内の空間づくりで、意識してきたことはありますか。
老木:ありきたりな病室が嫌で、壁紙も照明も天井の素材も、自分で選んできました。
インテリアが好きなので、開院から2回、大がかりな改装もしています。
入院される方には、短い滞在でも気持ちよく過ごしていただきたいと思っています。
小さなお子さんの患者さんも多いので、待合室にはキッズスペースを設けています。
ー院内に「ホーム」という部屋があると伺いました。どのような部屋なのでしょうか。
老木:待合室と診察室のあいだにある、次に診察を受ける方にお入りいただく部屋です。
目的は3つあります。
診察の流れをスムーズにすることと、待合室とのあいだに距離をつくって、診察室での会話が待合室に聞こえないようにすること、そして診察の前に気持ちを落ち着けて、ゆったり待っていただくことです。
耳鼻咽喉科では、聞こえの具合によっては診察中に大きな声でお話しすることがあります。
その声が待合室に届かないことは、プライバシーの面で大事だと考えています。
ー「ホーム」という名前には、どのような意味を込めたのですか。
老木:ひとつは家庭のホームです。
「アットホーム」という言葉のとおり、くつろいでいただきたいという意味です。
もうひとつは、駅のプラットホームのホームです。
いろいろな行き先の電車を待つ場所、という意味を重ねました。
くつろぎながら診察を待っていただきたい、という願いを込めています。
手術は飽きない。耳鼻咽喉科を選んだ理由

ー先生ご自身のことを伺います。医師を志したきっかけを教えてください。
老木:父が小児科の開業医でした。
私は次男で、兄も医師になっています。
子どもの頃は「次男だから何になってもよい」と言われて育ちましたが、振り返ってみると、母がそれとなく医師への道に誘導していたように思います。
ー数ある診療科のなかで、耳鼻咽喉科を選んだのはなぜでしょうか。
老木:学生時代の私は、自他ともに認める「内科系」の人間でした。
内分泌内科のような、複雑な病気の診断に興味があったのです。
ただ、診断というのは、データを積み重ねて結論を出す仕事です。
それはいずれコンピュータのほうが得意になるだろうと、私は40年以上前の学生の頃から考えていました。
だから、好きだった診断学にはあえて進まず、手術のできる科に行こうと決めました。
最後は眼科と迷った末に、耳鼻咽喉科を選んでいます。
手術は同じ術式でも一例ごとに条件が違うので、飽きることがありません。
出来ばえも一例ごとに違って、自分の仕事の結果がはっきり見えます。
また、耳鼻咽喉科は初診から手術、術後の経過まで、ひとりの患者さんを自分の科で診続けることができます。
そこにも魅力を感じました。
ー内科系だった学生が、外科医になったわけですね。
老木:医師になって5、6年経った頃には、後輩からも周りからも「老木は完全に外科系」と言われるようになっていました。
開業したことで、自分の考える医療を提供できるように

ー開業までの経緯を教えてください。
老木:実は、開業するつもりはまったくありませんでした。
勤務医時代の後半は関連病院に勤めていましたが、耳鼻咽喉科の常勤医は私一人で、何年経っても部下が来ませんでした。
チームで医療をすることも、後輩を育てる楽しみも持てず、勤務医を続けても展望が描けなかったため、開業することにしました。
ー開業してみて、気持ちに変化はありましたか。
老木:開業して1年経つ頃には、これほど面白い仕事はないと思うようになっていました。
勤務医の頃はできなかった、いろいろなことを自分で考えて形にできます。
医院の空間も、スタッフの育て方も、診療の体制も、すべて自分の裁量で決められます。
仕方なく始めたはずが、すっかり夢中になっていました。
開業後は、同じように短期滞在手術に取り組む耳鼻咽喉科の医師どうしの研究会にも、長く関わってきました。
フロリダの研修で変わった、患者さんからの見え方

ー医院づくりに影響を与えた経験はありますか。
老木:開業の1年前、当時勤めていた病院が企画した医療従事者向けの研修で、アメリカ・フロリダのウォルト・ディズニー・ワールドにある研修施設に1週間滞在しました。
顧客に向けたサービスを、テーマごとに学ぶプログラムです。
そこでの学びが、私にとって大きな転機になりました。
たとえば、患者さんが医療機関を評価している要素の上位は「医師がやさしい」「話を聞いてくれる」「待ち時間が短い」であるということです。
私はそれまで、診療の中身が評価されると思い込んでいました。
しかし患者さんは実際には、医療の中身とあわせて、人としてどう接してもらえたかを見ている。
冷静に考えれば当たり前のことに、そのとき初めて気づきました。
ー患者さんから愛される医院であるために、診療や空間づくり以外に重視していることはありますか。
老木:スタッフが働きやすい職場であることです。
当院では入職後の3か月は研修期間と位置づけて、日々の業務のなかだけでなく、時間を取って教育しています。
年2回の全体会議で医院の方向性を共有し、外部の担当者による1対1の面談も取り入れています。
スタッフが仕事を面白いと感じてくれれば、たとえば産休の後にも戻ってきてくれます。
職員の満足と患者さんの満足はつながっていると考えています。
スタッフの働きぶりが、そのまま患者さんへの接し方に表れるからです。
耳・鼻・ノドの症状が続いている方へ

ー最後に、読者へのメッセージをお願いします。
老木:鼻づまりや鼻水、耳の聞こえ、のどの違和感など、長く続いている症状を、「この程度で受診してよいのか」「薬を続けるしかない」と、そのままにしている方は多いと思います。
続けている治療に物足りなさを感じていたら、一度ご相談ください。
選択肢を並べて、一緒に考えます。
手術に不安がある方は、話を聞くだけの受診でも構いません。
耳・鼻・ノドのことで困ったら、気軽に頼っていただける医院でありたいと思っています。
老木理事長は、「手術は大きな病院で受けるもの」というイメージを変えるため、四半世紀にわたって有床診療所を続けてきた。
耳・鼻・ノドの良性疾患を対象に、専門の異なる4名の常勤医が診療にあたる。
医療そのものに限らず、ホスピタリティや院内の過ごしやすさ、スタッフの働きやすさなど、医院のあり方全体に理事長の考え方が反映されている。
仕方なく開業したと本人は振り返るが、その後の歩みには一貫した考えがある。
耳・鼻・ノドの諸症状に対する大病院に代わる選択肢として検討したい医院だと感じた。
耳鼻咽喉科サージクリニック老木医院について

| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| クリニック名 | 医療法人hi-mex 耳鼻咽喉科サージクリニック老木医院 |
| 理事長 | 老木 浩之(おいき ひろゆき) |
| クリニック紹介 | 2001年12月開院。耳・鼻・ノドの外来診療に加え、日帰り・短期入院での手術に対応する有床診療所(病床数10床)。中耳炎、副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、鼻中隔湾曲症、声帯ポリープ、サーファーズイヤーなど、耳・鼻・ノドの良性疾患の診療と手術をおこなう。舌下免疫療法やゾレア(オマリズマブ)など、アレルギー性鼻炎の治療選択肢を幅広く提供。分院として和泉中央駅改札近くの「はるか耳鼻咽喉科」があり、手術が必要な場合は本院と連携する。 |
| 所在地 |
〒594-0061 大阪府和泉市弥生町2丁目14-13 |
| アクセス | JR阪和線「和泉府中駅」からバス系統1番、泉北高速鉄道「和泉中央駅」からバス4番乗り場で「弥生自治会館前」下車徒歩2分/和泉府中駅から車で10分、和泉中央駅から車で7分/専用駐車場17台 |
| 電話番号 | 0725-47-3113 |
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午前診 9:00〜12:00(土は〜12:30)/午後診 14:30〜17:30 休診日:日・祝日および火・木・土曜午後(第5土曜は休診) |
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