医療技術の進歩と選択肢の多様化を背景に、保険診療と自由診療のどちらを選ぶべきか、どの診療科の入り口を叩けばよいのかと迷う患者は少なくない。
中でも、晩産化(※1)を背景に関心が高まるNIPT(新型出生前診断)や、美容医療といった自由診療の領域では、どこで、誰に相談すべきかの判断はより難しくなっている。
そうした中で、診療科の壁を越えた「ワンチーム医療」を掲げ、保険診療と自由診療の双方で患者を受け止めているのが、医療法人社団 福美会 ヒロクリニックだ。
同院は2008年に埼玉県川口市で皮膚科として開院し、患者からの声を起点に診療領域を広げてきた。
2026年5月時点では、皮膚科・美容皮膚科・美容外科・心療内科・内科・小児科・婦人科・NIPTなどを擁し、全国11拠点(※2)にまで展開している。

理事長を務める岡 浩子医師が大切にしているのは、「病気ではなく人を診る」という姿勢である。
同氏は大学病院の内科で約10年にわたり膠原病という難治性疾患と向き合った経験を経て、夫である岡 博史医師と共に開業の道へ進んだ。
なぜヒロクリニックは、幅広い診療科を構築し、一人ひとりの患者と向き合えるのか。
そこには、患者の「困った」を一つずつ拾い上げてきた仕組みづくりと、医療を人の人生に伴走する手立てとして捉える視座があった。
*1:厚生労働省「令和5年人口動態統計」
*2:2026年5月インタビュー時点
東京都新宿区出身。東邦大学医学部を卒業後、慶應義塾大学医学部内科学教室に入局し、膠原病内科を専門として約10年間にわたり大学病院での診療と研究に従事。研修先で出会った恩師から「病気ではなく人を診る」という診療姿勢を学ぶ。2008年、夫である岡 博史医師と共に埼玉県川口市にてヒロクリニックを開院。患者からの声を起点に、皮膚科・美容皮膚科・美容外科・心療内科・内科・小児科・婦人科・NIPT(新型出生前診断)など診療領域を順次拡張し、現在は医療法人社団 福美会の理事長として全国11拠点の運営に携わる。(2026年5月インタビュー時点)
「身近なかかりつけ医として、その方の人生に長く寄り添う」という理念のもと、診療科を横断するワンチーム医療の体制づくりに取り組んでいる。
皮膚科1院から全国11拠点へ。患者ニーズに応えながら広げてきた診療科

―ヒロクリニックは、全国に複数の拠点を展開されていると伺いました。まずは、その規模と、どのような患者様が来院されているのかをお聞かせください。
岡:現在、全国11拠点、医師24名、スタッフ約100名規模で運営しています。(※3)
2008年の開院当初は皮膚科がメインでしたが、心療内科の利用が増えています。
美容皮膚科・美容外科も以前と比べてご利用いただける患者様の幅が広がり、男性の患者様も増えています。
年齢層もさまざまで、下は小学生や中学生まで、ニキビやニキビ跡、スキンケアに関する相談窓口としてお越しになる方が多く、上は90代の方がお孫様と一緒にお越しになることもあります。
世代を超えて、皮膚の健康や美容に関する相談が、選択肢の一つとして一般化してきたことを感じています。
―ここまでの展開に至るまでに、十数年の歩みがあります。スタートは2008年、埼玉県川口市での皮膚科開業でしたが、なぜ川口だったのでしょうか。
岡:開業当時、川口市は、都心のベッドタウンとして発展が著しい場所でした。
夫である岡 博史医師が一時期、東京の赤羽で勤務していたことがあり、近隣の事情にもある程度明るかったということも理由の一つです。
当時、川口市には皮膚科があまりなく、わざわざ赤羽まで通われている患者様がいらっしゃるという話を聞いて、調べてみると、医療資源の供給が比較的限られている地域であることがわかりました。
そこでクリニックを開いてみたらどうだろう、というところから始まった次第です。
最初は私と夫の2人の医師で、皮膚科として開業しました。
その後、患者様のニーズを拾いながら美容皮膚科を併設し、共感してくださる先生方が少しずつ増えてくる中で、いろいろな科を増やしていきました。
ある一点でここから広げようと決めたわけではなく、患者様のニーズを拾っていきながら、「こうすればもっと患者様にとって便利かもしれない」という検討を繰り返し、追加していく中で、それがだんだんと広がっていきました。
例えば心療内科については、近隣で予約が取れずに困っていらっしゃる方がいる、といった声がお付き合いのある業者の方や患者様から耳に入ってきました。
そうした情報を拾っては、「じゃあやってみようか」と少しずつ追加してきました。
夫がそうした実務的な取り仕切りを担い、私は現場でしっかり患者様を診るというように、ある程度役割を分けてやってきました。

―医院数についても、これまでに増減があったと伺いました。現在(2026年5月インタビュー時点)の11拠点に至るまでには、どのような経緯があったのでしょうか。
岡:14拠点まで増えたことがありましたが、現在は11拠点で運営しています(※3)。
医師の偏在が指摘されていて(※4)、お辞めになった先生がいらっしゃると次の方が見つからない、ということが地方では起こりやすくなっています。
足りないところに我々が出向いてサポートに入ってきましたが、距離的にやりきれない場合は、苦渋の判断で閉院を選ぶこともありました。
無理に拠点を維持することよりも、開いている拠点で来てくださる患者様にしっかり向き合うことの方が大事だと考えています。
理想は、身近なかかりつけ医として長く通っていただけるサポートができるクリニックです。
乳幼児からご高齢の方まで、その方の人生のいろいろな場面でお手伝いできるような存在でありたいと考えています。
*3:2026年5月インタビュー時点、ヒロクリニック調べ
*4:厚生労働省「医師偏在指標(都道府県別)」(令和8年4月公表版)
診療科の壁を越えるワンチーム医療。どの入り口からでも受け止める体制を

―貴院が掲げている、診療科の垣根を越えた「ワンチーム医療」について教えてください。
岡:本院である川口院では、皮膚科・美容皮膚科・形成外科・美容外科・内科・心療内科・小児科・婦人科・泌尿器科・アレルギー科の10科(※5)を併設しています。
患者様の中には、「自分はどの科にかかればいいのだろう」「これは皮膚科で診てもらえるものなのか、美容皮膚科の領域なのか」と迷われている方が、実はとても多くいらっしゃいます。
そうした患者様に対して、どの入り口から入って来られても、その方に合った治療の選択肢をご案内できるようにしています。
患者様のニーズを丁寧に伺って選択肢を整理して提示し、最後は患者様ご自身に選んでいただくような流れを大切にしています。
具体的な場面で言えば、例えばニキビでお越しになる若年層の方の場合、まずは保険診療の皮膚科で治療を始めていただくことが多いです。
そのまま経過を見てよくなる方もいらっしゃいますし、ある程度のところで止まってしまった方や、もっと早く改善を目指したいという方には、自由診療の美容皮膚科のメニューを併用するご提案もしています。
保険診療か自由診療かの二択ではなく、その方の状態と目標に合わせて段階的に組み合わせていくような方針です。
いくつもの診療を一つのクリニック内で完結できることは、患者様にとっても私たち医療側にとっても、提案の幅が広がる大切な要素だと考えています。
乳幼児からご高齢の方まで幅広く来ていただいていますので、人生のさまざまな場面でお力になれる体制を整えています。
患者様の中には、美容のお悩みで来られた方が背景に精神的な負担を抱えていらっしゃるケースもあれば、内科で来られた方に皮膚疾患のご相談がついて出るケースもあります。
科の垣根を越えて、その方を丸ごといろいろな角度からサポートできる体制をつくることを大切にしています。

―ワンチーム医療を実現するためには、医師だけでなくスタッフの体制も重要だと思います。教育や日々の運用について、お聞かせください。
岡:スタッフには、いろいろな科を経験してもらい、どの科のことも案内できるようにトレーニングをしてもらっています。
美容に関しては、器具を使ったり、患者様に直接処置を行ったりすることもあるため、研修期間を設けて、指導者がついて丁寧にトレーニングを進めます。
他の科についても、実地で先輩スタッフが一つひとつ指導をしています。
医師に直接お話しするのは敷居が高いと感じられる患者様もいらっしゃいますが、複数の科に通じたスタッフが「こんな治療もありますよ」とお声がけし、橋渡しになる場面も少なくありません。
スタッフの理解と協力があってこそ、診療科を越えたご案内が成り立っていると考えています。
「どの科に行けばいいか分からない」「保険診療と自由診療のどちらがいいか分からない」と立ち止まってしまう患者様は、本当に多くいらっしゃいます。
そうした方が、まずは気軽に相談に来てくださることそのものが、私たちにとっては大事な入り口です。
入り口を選び間違えたから門前払い、ということが起きないようにしたい。
その思いから、診療科の壁を越えて、ワンチームで対応する体制を整えてきました。
*5:ヒロクリニック公式サイト掲載分類より、2026年5月インタビュー時点
恩師から受け継いだ「病気ではなく、人を診る」という原点

―先生は、「身近なかかりつけ医として、その方の人生に長く寄り添う」ことを理念に掲げていらっしゃいます。この姿勢が生まれた原点を教えてください。
岡:大学を卒業後、内科医として大学病院に約10年勤めていました。
その研修先で出会った恩師は、膠原病という免疫異常の病気を専門にしていらっしゃいました。
膠原病は、患者様とお付き合いを続けながら、長期にわたって経過を見ていく必要のある病気です。
また、皮膚科で扱うアトピー性皮膚炎なども、同じように長く向き合っていく病気です。
その恩師は、「病気を診るのではなくて、人を診なさい」と繰り返しおっしゃっていました。
病気と長く向き合っていく中でも、患者様が「先生に会ったら元気が出ました。また来ます」と帰っていかれる。
互いに「またね」と明るくお別れできて、翌月にまた「お変わりなくお元気でしたね」と言い合える。
その積み重ねの中で、患者様と一緒に年齢を重ねていきながら、チームワークでその方の状態を支えていくような診療の方針を掲げていらっしゃいました。
恩師ご自身も、「たとえ病気と長く付き合っていく必要があっても、患者様が満足して帰ってくださればそれが何より大事なことだと思っている」とおっしゃっていました。
実際、その先生のもとには、診察に来ているのかおしゃべりに来ているのか分からないくらい、先生と話すことを楽しみに通ってこられる患者様が大勢いらっしゃったのです。
その姿を間近で見ていて、こうした身近なかかりつけ医のようにサポートできる立場でありたい、と強く感じるようになりました。
―その原点が、現在(2026年5月インタビュー時点)の幅広い診療領域や、美容医療への向き合い方にもつながっているのでしょうか。
岡:私自身は内科を選び、その後さらに膠原病内科に進みました。
膠原病は全身の臓器に異常が出る病気で、皮膚にも、腎臓にも、脳にも、肺にも、神経にも症状が現れます。
全身を診るという経験を積めることが、内科医として「人を診る」上での土台になると考えて、この領域を選びました。
開業してからも、その軸は変わっていません。

美容医療についても、美容を前面に押し出したような雰囲気のクリニックにはしたくないという思いがあります。
ちょこちょこと身近に通っていただいて、「先生こんなことで困っているのだけれど、どうしたらいい」と気軽に聞いていただける場所であれば、と考えています。
実際、「美容クリニックは敷居が高い」と感じていらっしゃる方は、少なくないのではないかと思います。
5年も6年もずっと気になっていたけれど、なかなか足を踏み入れる勇気が出なくて、たまたま皮膚科を受診したら美容皮膚科も併設されていたから、勇気を出して相談してみました、とおっしゃってくださる方もいらっしゃいます。
そうした方々の入り口になれているのであれば、診療科の幅を持っていることの意味があると感じます。
身近なかかりつけ医として、その方の人生のいろいろな場面に立ち会わせていただく。
それが、恩師から受け継いだ姿勢を、日々の診療の中で形にしていく私なりの方法です。
「その方だけの地図」を一緒に描く。対話を重視したカウンセリング

―美容医療において、先生がカウンセリングで大切にされていることを教えてください。
岡:カウンセリングで大切にしているのは、患者様との対話を通じて「その方だけの地図」を一緒に描いていくことです。
例えば、シミに悩みを抱えてご来院いただいた患者様に対しても、シミをどうしたいかは、本当に人それぞれです。
「皮膚がんかもしれない」と心配して来られる方の場合は、その不安に寄り添い、まず検査をして「病気ではありませんよ」とお伝えすることがゴールになります。
「とにかく取ってしまいたい」という方であれば、「悪性のものではありませんね。取るとすれば、こういう方法がありますよ」とご提案します。
しかし、そこから先の選び方が、また患者様ごとに大きく異なります。
なかなかお時間が取れないので一度で済ませたいという方もいらっしゃれば、お肌にできるだけ負担をかけずに進めたいという方もいらっしゃいます。
人に気づかれずにゆっくり進めたい、ついでに気になっていた他のシミもまとめて見てほしい、若返りにつながる施術も合わせて検討したい、というご希望もあります。
ですから、どれくらいの頻度で通えるか、いつまでにどうなっていたいか、何かイベントに合わせてのことなのか、ご予算はどのくらいか。
そうした生活の文脈を丁寧に伺った上で、その方に合った選択肢を整理してご提案するようにしています。
医学的に理想とされる方法と、その方の生活の中で実現できる方法は、必ずしも一致しません。
医学的に理想ではなくても、その方にとって望ましい形で進められるなら、それでいい。
そのバランスを大切にしています。

―患者様が思い描く理想と、医師から見て「もう少し違う方向もあるのでは」と感じる場面もあると思います。そうした時はどのように向き合われていますか。
岡:当院は、「大きく変身させますよ」という打ち出し方はしていません。
そうしたご希望にお応えすることももちろん可能ですが、私が大切にしているのは、その方からにじみ出てくる個性や良さを活かしながら、ご本人が気持ちよく過ごせるようになっていただくことです。
患者様がコンプレックスとして悩んでいらっしゃることが、他の方から見ればチャームポイントとして映る場合もあります。
そうしたことも丁寧にお話ししながら、その方の良さを活かす最終的なゴールを一緒に描いていきます。
傾向として感じているのは、「大きく変身したい」というご希望よりも、「老化していく自分に備えたい」「身近な美容院に通うように、自分への投資として気持ちよく過ごせるようにしたい」というニーズが増えていることです。
そうした方々には、毎月通っていただきながらお肌の状態を整えていくような、フォトRFなどの施術をご提案することが多くなっています。
短期間で何かを劇的に変えるというよりも、長く付き合いながら、その方の人生の節目に立ち会っていく。
そうした美容医療の在り方が、私自身にも自然に馴染んでいます。
結果を待つ時間を、より迅速に。NIPT二つの仕組み

―貴院は、NIPT(新型出生前診断)の領域でも幅広く受検者を受け入れていらっしゃいます。まずは、NIPTがどのような検査なのかを簡単にお聞かせください。
岡:NIPTは、妊娠中のお母様から少量の採血をしてお腹の赤ちゃんの染色体に異常がないかを調べる検査です。
ダウン症候群(21トリソミー)や、18トリソミー、13トリソミーといった染色体の数の異常を検出することができます。
妊婦の方からの採血のみで行える検査として、2013年に国内で臨床研究として開始されて以降、受検環境が整備されてきました(※6)。
「もしお腹の赤ちゃんに何かあったらどうしよう」という思いから検査を決められる方が大半です。
それだけ切実に結果をお待ちになっていることは、受検後にいただくお問い合わせの多さからも伝わってきます。
結果をお返しする目安の日数は事前にお伝えしていますが、「まだでしょうか」とご連絡をいただくことは少なくありません。
受検される方の年齢層は、30代半ば以降が中心です。(※7)
晩産化や共働きが進む中で、キャリアと出産のタイミングをどう両立させるかに悩みながら出産期を迎える方が増えています。
ご家族の人生に関わる選択を控えていらっしゃるからこそ、結果をお待ちいただく時間そのものをできる限り短くしたい、というのが私たちの基本的な姿勢です。
―患者様にお待ちいただく時間を短くするために、どのような取り組みをしているのでしょうか。
岡:取り組みは、二つあります。
一つは、検査の進捗状況をその都度ご確認いただけるマイページの仕組みです。
ご検体が検査所に届きました、検査が始まりました、というように、段階ごとの進行状況をオンラインで表示しています。
結果そのものも、メールでご連絡しています。
郵送では1日2日と時間がかかってしまいますが、オンラインであれば結果が出たその瞬間にお手元に届きます。
ご自身でいつでも進捗を確認していただけることで、お問い合わせ対応にあたるスタッフの負担を軽減させることもできています。
もう一つは、陽性という結果が出た場合の対応です。
結果が陰性の場合は、染色体異常がない可能性が高いとされる一方、陽性の場合はその時点ですぐに「陽性である」と確定するわけではなく、別途検査が必要です。
胎盤の異常などの要因で、胎児自身には染色体異常がないにもかかわらず、陽性が出るケースがあるためです。
NIPT検査で陽性が出た場合は、続けて羊水検査を行います。
ただ、羊水検査は胎児が一定の時期まで育ち、羊水が十分に増えてからでないと実施できません。
陽性の通知を受け取ってから羊水検査が可能な時期に至るまで、ご家族にとっては落ち着かない期間が生じてしまいます。
この期間の不安に少しでも寄り添うことができたらと考え、当院では「陽性スコア」という参考指標をご提供しています。
これは、当院でこれまでに蓄積してきた検査データをもとに、その陽性結果がどの程度陽性確定の方向に寄っているかを、スコアの形でお示しするものです。

確率を数値で明示することはしておりません。
最終的な判定ではない以上、断定的な数字をお出しすることは責任ある対応ではないと考えているためです。
代わりに、スコアの高低という形で傾向をお示ししています。
スコアが低めに出ていれば偽陽性の可能性も視野に入り、高めに出ていれば心構えをもって羊水検査に臨むこともできます。
羊水検査が可能な時期を待つ間に、何の手掛かりもなく過ごすのではなく、判断の補助となる情報を持っていただく。
それが、この仕組みを設けている理由です。
*6:日本医学会 出生前検査認証制度等運営委員会「設置の経緯について」
*7:2026年5月インタビュー時点、ヒロクリニック調べ
*8:陽性スコアの算出は、ヒロクリニックで蓄積した検査データに基づく。ヒロクリニック公式サイト「陽性スコアについて」
不便を一つずつ取り除く。自前で組み上げる予約とオンラインシステム

―予約システムやマイページといった患者様向けの仕組みを、自前で開発されていると伺いました。クリニックでこうした体制を整えていらっしゃる背景には、どのような考えがあるのでしょうか。
岡:当院では、予約システムをはじめ、患者様にお使いいただく仕組みの多くを内部で開発しています。
プログラミングに通じた夫が中心となり、内部のチームで組み上げてきたものです。
外部の事業者と契約してシステムをお借りすることを検討したこともありましたが、患者様にお使いいただくものであるため、現場で「ここが少し使いづらい」「こうした方が分かりやすい」と気づいた点には、できる限り早く手を入れたいと感じる場面も多く、その柔軟さを担保するために、自分たちで作って自分たちで直す体制をとることを選びました。
「今日この時間に予約を取りたいけれど、電話がつながらない」「結果はいつ届くのか」というような、患者様にとっての小さな不便が積み重ならないようにする。
それが、私たちが内製にこだわっている理由です。
―具体的にはどのような仕組みが整っているのでしょうか。
岡:予約に関しては、24時間ご利用いただけるオンラインシステムをご用意しており、電話の受付時間に縛られることなく、ご都合のよいタイミングで予約を取っていただけます。
NIPTの検査進捗をご確認いただけるマイページについても、同じく内製で運用しています。
加えて、オンライン診療の体制も整えてきました。
遠方にお住まいの方や、忙しくて通院の時間が取りづらい方など、来院以外の選択肢を必要とされる患者様に向けて、診療の入り口を広げています。
こうした仕組みは、患者様の利便性を高めるだけでなく、お問い合わせの電話を受けるスタッフの負荷を軽減することにもつながっています。
患者様にもスタッフにも、双方の手間を減らすことができれば、現場の医療者は本来の診療により多くの時間を使えるようになります。
私自身は現場で患者様と向き合うことを大切にしていますが、その時間をしっかり確保できるのも、こうした仕組みが足元を支えてくれているおかげです。
ITの活用が日々できることを広げてくれる時代の流れの中で、これからもその時々で必要な仕組みを足しながら、患者様の不便を一つずつ取り除いていきたいと考えています。
父の早逝と母の介護。家族との経験が育てた、「伴走する」という医療観

ー医療の道を志されたきっかけを教えてください。
岡:実家は医療とは縁のない家庭でした。
父は警察官、母は専業主婦で、身近に医師がいたわけではありません。
ただ、幼い頃にきっかけと呼べる経験はいくつかありました。
私自身、赤ちゃんの頃に熱性けいれんを起こしやすい体質で、何度か病院に運ばれたことがあります。
熱が出るたびにけいれんを起こす可能性があったため、その後も小児科に長く通っていました。
そのかかりつけの小児科の女性の先生は、本当に優しい方でした。
幼い私が診察室で興味本位に先生の道具を触ってしまっても、「いいよ」と聴診器を貸してくださったり、嫌な顔ひとつせずに付き合ってくださったり。
病院に行くと「先生に会える楽しい場所」だというイメージが、自然と私の中に育っていきました。
医師という職業に対する漠然とした憧れは、その頃から少しずつ芽生えていたのだと思います。
医師を目指そうと明確に意識するようになったのは、中学・高校の頃です。
私が9歳の頃に、父が病気で亡くなりました。
その後、祖父母も中学生の頃に相次いで亡くなり、身近な人を看取る経験を重ねました。
そうした経験を通じて、人が病気で苦しむ場面に立ち会った時に、力になれる仕事に就きたいという思いが少しずつ固まっていき、医学部へ進むことを選びました。
専攻は内科を選び、その後、全身を診る視野を持ちたいという思いから膠原病内科に進みました。
―大学病院での約10年の勤務を経て開業への道を歩まれましたが、その転機について教えてください。
岡:大学病院に10年ほど勤めた頃、いくつかのことが重なりました。
一つは、私自身の年齢的に妊娠や出産を意識する時期に差し掛かったこと。
もう一つは、母が認知症を患い、介護が年々大きな負担になっていったことです。
大学病院は重症の患者様を担当することが多く、入院患者様も常にいらっしゃる場です。
しっかりと責任を持って向き合うべき場所で、家庭の事情で頻繁に休んでご迷惑をかけることは、私自身が許せませんでした。
医師の代わりは、ほかにも素晴らしい先生方が多くいらっしゃいます。
しかし、家族にとっての私は一人だけ。
母は女手一つで私を育ててくれた人で、最後の時間をしっかり見守りたい、という気持ちもありました。
ちょうど同じ頃、夫の中で開業の意向が固まっていたことも重なり、私は医局を離れ、夫と共に開業の道に進むことを決めました。
家庭のことを大切にしながら、自分の医療を続けていける場をつくりたい。
その思いが、ヒロクリニックの始まりにつながっています。
家族の病気や介護を経験する中で、必要なサポートにすぐ辿り着けないもどかしさを、私自身も感じてきました。
不安な時にすぐ予約が取れる、必要な検査を身近に受けられる。
当院の体制づくりにあたって、利便性と医療の質を両立させることを大切にしてきたのは、こうした個人的な経験も背景にあります。
患者様のご家族の人生にも、私たちの医療は関わっていく。
その重みを忘れずにいたいと考えています。

―最後に、どの診療科にかかればよいか迷っていらっしゃる方や、自由診療を検討されている方に向けて、メッセージをお聞かせください。
岡:当院では、診療科の垣根を越えてワンチームで対応する体制を整えています。
「どの科にかかればいいのか分からない」「保険診療と自費診療のどちらに行けばいいのか判断がつかない」と立ち止まってしまう患者様にも、どの入り口から来ていただいても、その方に合った道筋をご案内できるよう心がけています。
中には、これまでにいくつかの医療機関を経て、複雑なご事情を抱えてご来院になる方もいらっしゃいます。
そうした方こそ、まずは気軽にご相談にお越しください。
すぐに治療方針をお出しするのではなく、これまでのご経過やお気持ちを丁寧に伺うことから始めます。
その上で、当院でお手伝いできることを一緒に考えていきます。
情報が溢れる時代だからこそ、自由診療を選ばれる際には「このクリニックは、自分の事情にどこまで寄り添って具体的に支えてくれるか」という視点を、判断の軸に置いていただきたいと考えています。

検査や施術を提供することそのものは、多くの医療機関で行われています。
そこから一歩踏み込んで、検査の結果や施術の経過を、患者様の人生の文脈の中でどう受け止め、どう次の選択につなげていくか。
そこに対する向き合い方こそが、医療機関ごとの本質的な違いだと考えています。
医療をサービスとして捉えるのではなく、患者様の人生に伴走するための手立てとして捉える。
その姿勢を共有できる医療機関を選んでいただくことが、ご自身の人生にとってよりよい選択につながると思います。
私たちヒロクリニックも、そうした医療機関の一つとして、これからも患者様のお話を伺いながら、必要な仕組みを一つずつ整えていきたいと考えています。
岡理事長の語りから一貫して伝わってきたのは、医療を「病気を取り扱う行為」としてではなく、「その方の人生に長く伴走する手立て」として捉える姿勢だった。
大学病院の内科で約10年にわたり膠原病という難治性の領域に向き合い、恩師から「病気を診るのではなく、人を診る」という診療姿勢を受け継いだ。
その思いは、皮膚科から始まり美容皮膚科・心療内科・NIPTへと診療領域を広げてきたヒロクリニックの体制づくりにも、一貫して通底している。
カウンセリングで「その方だけの地図を一緒に描く」と語る場面、NIPTの結果を待つ時間に少しでも判断材料を持っていただこうと陽性スコアの仕組みを整えてきたこと、自前で組み上げた予約システムやマイページで患者様の小さな不便を一つずつ取り除いてきた歩み。
それらはいずれも、「不安な時間を少しでも短く」「困った時にすぐ役に立つ手立てがある状態」を、患者様一人ひとりに届けるための積み重ねだった。
家族の介護や身近な人を看取る経験を通じて、「必要なサポートにすぐ辿り着けないもどかしさ」を知った岡理事長だからこそたどり着いた医療の形なのだろう。
「身近なかかりつけ医として、人を診る」。
総合医療クリニックとして、岡理事長は今も診療の現場に立ち続けている。
入り口で立ち止まる患者様にとって、ヒロクリニックの存在は、医療と人生をつなぎ直す手立ての一つになっていくはずだ。
医療法人社団 福美会 ヒロクリニックについて

| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| クリニック名 | 医療法人社団 福美会 ヒロクリニック |
| 理事長 | 岡 浩子(おか ひろこ) |
| クリニック紹介 | 2008年、埼玉県川口市にて皮膚科として開院。「身近なかかりつけ医として、その方の人生に長く寄り添う」という理念のもと、診療科の壁を越えたワンチーム医療を展開。皮膚科・美容皮膚科・形成外科・美容外科・内科・心療内科・小児科・婦人科・泌尿器科・アレルギー科などの保険診療と自由診療を一つのクリニック内で受けられる体制を整えている。NIPT(新型出生前診断)では「陽性スコア」やマイページなどの仕組みで、結果をお待ちいただく時間の不安に寄り添う取り組みを続けている。 |
| 所在地(池袋駅前院) |
〒171-0021 東京都豊島区西池袋5-1-3 メトロシティ西池袋 3階 |
| アクセス(池袋駅前院) | 池袋駅直結 |
| 電話番号(池袋駅前院) | 0120-915-967 |
| 診療時間(池袋駅前院) |
午前 9:00~13:00 午後 14:30~18:00 ※日曜休診 |
| Webサイト | https://www.hiro-clinic.or.jp/ |
| 公式メディア |
YouTube http://www.youtube.com/@hiro-clinic |
| ご予約 | 24時間オンライン予約可能 |