2022年7月、東京・錦糸町の南口エリアに「錦糸町皮膚科内科クリニック」は産声を上げた。
院長を務める田尻友恵(たじり ともえ)氏は、開院から現在(※1)に至るまで、「患者の悩みを一箇所で完結させる」というプライマリケアの理想を、論理的かつ情熱的に追求し続けている。
なぜこの地で複数科目を包括する医療を目指すに至ったのか、その歩みと診療への深いこだわりを聞いた。

※1:2026年5月インタビュー時点
錦糸町南口の地域医療へ一歩を踏み出した、2022年7月

―なぜ、あえて激戦区とも思われる錦糸町を選んだのでしょうか?
田尻:物件を探して初めてこの街を歩いた際、下町が好きなこともあり、直感でいいなと思えたのです。
錦糸町は巨大なターミナル駅ですが、駅の北口と南口では医療機関の分布や地域の特性に異なる傾向が見られました。
北口にはいくつかの皮膚科拠点がありましたが、南口側には、仕事帰りの会社員や長年住まわれているご高齢の方が、日常的な皮膚トラブルを気軽に相談できる場所が限られていた。
多くの方が、三次救急を担う大病院へ行くか、あるいは他区まで足を運ばざるを得ない状況でした。
街の活気に対して、皮膚科医療の選択肢がさらに求められている。
ここに私が貢献できる役割がある、と考えたのが全ての始まりです。
―開院当初の反響はいかがでしたか?
田尻:大がかりな宣伝をせずとも、開院初日に50名を超える方が来院されました。(※2)
南口エリアでの皮膚科診療を待ち望んでいたという地域の状況を肌で感じ、この地での開院という決断に確かな意義を見出すことができました。
当初はビル1階のみのスモールスタートでしたが、ニーズに応えるうちに、2年後には2階フロアも増床。
現在(※3)は繁忙期における月間の延べ来院数が2,800名に達し、レセプト枚数も2,300枚を超えるなど、地域における医療の拠点としての役割を担うようになりました。(※2)
※2:2025年実績・錦糸町皮膚科内科クリニック調べ
※3:2026年5月インタビュー時点
「対話と触診」を重視する原点と、母としての痛切な原体験

―医師を志したきっかけは、幼少期の体験にあると伺いました。
田尻:はい。幼い頃、入院していた祖母のお見舞いによく通っていました。
そこで出会った担当医の方が、患者様1人1人と真摯に向き合っていらしたんです。
その丁寧な診察風景に感銘を受け、「自分もいつか、こんな風に人を支える医師になりたい」と思うようになりました。
―そこから、なぜこの診療科目を選ばれたのでしょうか。
田尻:皮膚科という領域は、自分の診察や処方した内容が「結果」として目に見えることが多いためです。
症状が目に見えて改善することは、患者様にとっても、そして私たち医師にとっても大きなモチベーションになります。
私自身、診察の現場が何より好きですし、患者様をしっかりと「目で見て」診察することが、信頼関係を築く第1歩だと考えています。
―診察室が混み合っていても、「患者さんの目を見て、患部を直接診て、触ること」を大切にされているとのことですが、先生が「直接診る」「目を見て話す」ことにここまでこだわるのはなぜでしょうか。
田尻:その想いがさらに強固なものになったのは、私自身が1人の母親として経験したある出来事でした。
私が医者になって3年目、2015年頃のことです。当時、まだ幼かった我が子がひどいオムツかぶれになり、抱っこ紐で小児科を受診しました。
しかし、そこで待っていたのは、効率が優先されるあまり、患者としての私たちとの対話が十分に持たれない診察でした。
子供の肌をじっくりと見ることなく、限られた時間の中で処方が決まっていく状況に、私は一人の親として無力感を覚え、何も言えなくなってしまったのです。
診察室を出た後、なんとも言えない「置き去りにされた」という悲しさと違和感がこみ上げてきました。
効率や時間の制約の中で、本当に必要な対話が届かないもどかしさ。
この経験があるからこそ、私は自分の診察室では、患者様を決して置き去りにはしない、目を見てしっかりと触れる医療を届けたいと強く心に誓いました。
―その決意は、実際の診察室でどのように体現されているのですか?
田尻:どんなに忙しくても、患者様の患部をこの目で確認し、必要があれば直接触れます。
触診から得られる情報は膨大です。硬さ、熱感、わずかな凹凸、それらは視覚だけでは捉えきれません。
そして何より、医師が患部に触れるという行為は、患者様の心身の負担に配慮し、信頼関係を築く出発点になります。
電子カルテの入力よりも先に、患者様の「顔」を見ます。
話し方や表情から、その方がどれほどその悩みに苦しんでいるのか、何を一番解決したいのかを読み取るためです。
診察の最後に必ず「他に言い残したことはありませんか?」と問いかけるのも、患者様が躊躇している小さな悩みを拾い上げるためです。
皮膚と内科を繋ぐ「多角的アプローチ」の真髄

―患者様の構成や、科目を跨ぐ診療のメリットについて教えてください。
田尻:当院を訪れる患者様の約7〜8割が皮膚科を入り口としています(※4)が、そこから内科的なアプローチが必要な疾患が見つかるケースは少なくありません。
皮膚は、全身を包み込む「一つの独立した臓器」です。単なる表面の異常として捉えるのではなく、その裏に隠れた内科的背景を考慮しなければなりません。
例えば、なかなか改善しない頑固な痒みや湿疹の背景に、糖尿病や重度の便秘、あるいは膠原病や内臓の悪性腫瘍が潜んでいる可能性を、医師は常に想定すべきです。
当院では皮膚科と内科の両面から判断を下すことが可能です。
―「ワンストップ」という言葉をよく使われますね。
田尻:はい。患者様をあちこちのクリニックに梯子させる負担を軽減したいんです。
「皮膚科に行って、内科に行って、次はアレルギー科……」という手間を、一つの場所でお悩みに対応する「ワンストップ」の医療で解決すること。
医師の専門領域を広げることで、患者様の利便性と診療の質を両立させたい。それが私の理想とするホームドクターの姿です。
※4:2026年5月インタビュー時点、錦糸町皮膚科内科クリニック調べ
治療の行き詰まりを打破する「紫外線治療」と「苦痛への配慮」

―皮膚トラブルに対する「紫外線治療」の役割について詳しく教えてください。
田尻:塗り薬や飲み薬で治療が難航しているとき、紫外線治療(光線療法)を選択肢に加えることで、良い経過をたどるケースがあります。
乾癬、白斑、アトピー性皮膚炎、掌蹠膿疱症など、長年悩まれてきた患者様にとって、この選択肢の提示は大きな意味を持ちます。
当院では、ターゲット型から全身型まで複数の光線治療器を導入しており、副作用のリスク(赤みや色素沈着等)に十分配慮しながら、症状に合わせた照射を行っています。
―ペインクリニック科として「痛み」にも対応されていますね。
田尻:皮膚科とペインクリニックは、実は非常に親和性が高い領域です。
代表的なのが帯状疱疹です。
皮膚の症状が落ち着いた(または軽快した)後も、焼けるような痛みに苦しむ方は少なくありません。
当院では皮膚の治療だけでなく、神経ブロック注射や硬膜外麻酔、光線治療器を用いた痛みの緩和に配慮したケアまで、一貫して対応できる体制を整えています。
また、肩こり、腰痛、関節痛といった整形外科領域の痛みに対しても、患者様の状態に応じたブロック注射や光線治療を組み合わせています。
女性医師ならではの視点で、痛みに伴う生活の支障を少しでも軽減できるよう配慮しています。
「変化を可視化する」 納得感を支える科学的な記録

―治療の変化がなかなか実感できない患者様へ、どのような工夫をされていますか?
田尻:患者様は毎日ご自身の顔を鏡で見ているため、微細な変化には気づきにくいものです。
そこで当院では、高精細カメラによる記録を徹底しています。初診時から定期的に写真を撮影し、カルテに保存します。
再診時に「変わっていない」と感じている患者様に対しても、モニターで以前の写真と並べて比較していただくことで、産毛の状態やシミの輪郭の変化を客観的に確認することができます。
この「変化の可視化」は、治療を前向きに継続していただくための大きな支えとなります。
AGA(男性型脱毛症)やシミ、ニキビ跡の治療において、医師の主観的な判断ではなく、患者様自身の目で事実を確認していただく。
この透明性こそが、信頼関係を築く鍵になると考えています。
多彩なメニュー数は「患者様の声」という枝から伸びた結晶

―なぜこれほどまでに自費診療や美容メニューを拡充させたのでしょうか?
田尻:すべては現場で患者様が投げてくれたボールを受け止めた結果です。
開院当初、メニュー化していなかったものでも、診察中に「先生のところでできないの?」というご要望を度々いただきました。
例えば、ピアスの穴開け。
当初は予定していませんでしたが、「信頼できる医師に開けてほしい」「他院で開けてトラブルになった時、そのまま診てもらえる体制が欲しい」という声があり、導入を決めました。
ただメニューを増やすだけではありません。
ピアスをきっかけに金属アレルギーや感染症で穴が塞がりそうになった時、通常なら「ピアスを諦める」という選択肢しかありません。
しかし、患者様はせっかく開けた穴を残したい。
その想いに応えるために、炎症を抑えながら穴を保持する「シリコンピアス」を導入するなど、解決策を深掘りしてきました。

―メディカルダイエットや、その他のメニューについても同様ですか?
田尻:その通りです。
例えばメディカルダイエット(※5)についても、肥満に伴う皮膚トラブルや膝の痛み、さらには将来的な生活習慣病への不安を抱える方の相談が発端です。
当院は内科と皮膚科の両面からアプローチできるため、体重管理が皮膚や体全体の健康にどう影響するかを、総合的にアドバイスできる強みがあります。
ニーズに合わせて解決策を増やしてきた結果、メニュー数の拡大につながりました。
この多彩なメニューは、当院が患者様の声に真摯に耳を傾けてきた「歴史」そのものなのです。
※5:メディカルダイエットは自由診療となります。費用は症状等により異なります。副作用・リスクとして吐き気、下痢、低血糖症状、腹痛、便秘等が生じる可能性があります。詳細はクリニックへご確認ください。
ドクターズコスメを「処方」として管理する、医師の覚悟

―ドクターズコスメの取り扱いにおいて、特に留意している点はどこにありますか?
田尻:ドクターズコスメは、医療機関の知見をもとに開発され、一人ひとりの肌の特性を考慮したこだわりの成分や、健やかな肌を保つための成分が配合されています。
そのため、私はこれを単なる「物品販売」だとは思っていません。
ドクターズコスメは医師が責任を持って管理すべき「処方」の一環です。
例えば、ハイドロキノンやトレチノインを含む「ゼオスキン」などの製品。
これらは肌へのアプローチを考慮して配合されている反面、使い始めの時期には、一時的な乾燥感や赤みを伴うことがあります。
当院では「売って終わり」の製品ではなく、その後の経過にこそ責任を持つべきだと考えています。
定期的な診察をセットにし、その肌の状態が「適切な反応」なのか「炎症によるダメージ」なのかをプロの目で診断します。

―患者様へのアフターフォローも徹底されているのですね。
田尻:はい。休薬期間の設定や使用量の微調整、反応が強すぎるときの代替案の提示など、一人ひとりの肌質に合わせて細かくコントロールします。
副作用のリスク(接触皮膚炎や刺激感等)を最小限に抑えつつ、納得のいく結果を目指す。
医療機関でコスメを扱うことの本質的な価値は、この「医師による伴走」にこそあります。
患者様が鏡を見るのが楽しみになるその日まで、私たちが医療従事者として責任を持って管理し続けます。
2階フロアへの増床と「4診体制」への勇気ある経営判断

―2024年に実施した大規模な増床の裏側、当時の心境を詳しく教えてください。
田尻:開院1年目、1階の待合室が患者様で溢れ、外の階段まで列ができてしまった光景は今でも忘れられません。
地域医療の砦を目指しながら、これほどまでの負担を強いて良いのかと。
当時、私は「患者様が困っている今、動かなければ意味がない」と断行しました。
2階を借り受けるための改装計画を、診療の合間を縫って進める日々は過酷でしたが、患者様の利便性を守るための一歩に迷いはありませんでした。
―1階と2階で機能を分離したことで、どのような具体的な変化がありましたか?
田尻:1階を保険診療、2階を美容・自費診療フロアとして分離したことで、院内の混雑を大幅に緩和することができました。
現在(※6)は、医師が複数在籍する「4診体制」を維持しています。
これは、一人ひとりの患者様に対し、医師がじっくりと対話する時間を確保するため、そして急患の方を極力お待たせしないための体制です。
また、医師が複数名いることは、医療の質を多角的に担保することにも繋がっています。
診断が難しい複雑な症例に対し、その場ですぐに別の医師に意見を仰ぐ「コンサルテーション」が日常的に行われています。
複数の専門医が連携するこの「チーム医療」の体制は、錦糸町という多忙な街で私たちが提供したい誠実さの形だと考えています。
この体制を維持するためのコストは低くありませんが、それこそが医療の質と徹底したリスク管理を支える基盤なのです。
※6:2026年5月インタビュー時点
組織運営の修羅場を越えて ランチミーティングが変えた「対話」の風土

―スタッフとの信頼関係を築くために、どのような葛藤があったのでしょうか。
田尻:正直に申し上げれば、開院当初は「私が背中を見せればスタッフはついてくる」と過信していました。
理想とする医療を形にすることに必死で、現場を支えるスタッフの疲弊に気づけていなかった。
信頼していたスタッフから厳しい言葉を掛けられた時は、経営者として、一人の人間として何が足りないのかを夜通し自問自答しました。

―その打開策となった「ランチミーティング」の具体的な中身とは?
田尻:2ヶ月に1回、診療を止めて行うこのミーティングは、単なる食事会ではありません。
「本音でぶつかる対話の場」です。
私が「至らない点を指摘してほしい」と頭を下げるうちに、スタッフから改善策が上がり始めました。
「受付での説明時間が足りない」「この動線では患者様に失礼がある」。
そんな意見の一つひとつを、私は「宝物」だと思ってメモに取りました。
そして、次のミーティングまでに必ず「改善の結果」を形にして見せました。
要望があった機材を導入し、マニュアルをスタッフと一緒に書き換える。
この「自分の声がクリニックを動かし、より良い医療に繋がっている」という実感が、彼女たちの当事者意識を大きく高めるきっかけとなりました。
この風通しの良さは、当院が大切にしている重要な基盤だと思っています。
錦糸町から王子へ。「信頼の輪」を広げる次なる挑戦

―なぜ王子という場所を選び、どのようなビジョンを描いているのですか?
田尻:王子もまた、錦糸町と同様にあらゆる世代が生活を営む街です。
だからこそ、私たちが大切にしてきた「皮膚も内科も、保険も美容も、ワンストップで解決する」というモデルが、この街の皆さんの健やかな生活を支える選択肢になると考えています。
錦糸町で培ってきた「目を見て、触れる」という診察スタイルを継承する医師たちと共に、地域に根ざした信頼の拠点を広げていきたいと考えています。
―これからの目標、そして患者様へのメッセージをお願いします。
田尻:男女問わず、小さなお子様からご高齢の方まで、納得感を持って受診していただけるホームドクターであり続けたい。
規模が大きくなっても、私が医師を目指した原点──。
あの時、抱っこ紐の我が子を診てもらえなかった悲しみを忘れることはありません。
患者様の抱っこ紐をそっと解き、その下の肌に宿る悩みを自分のこととして診る。
「一緒に改善を目指しましょう」という言葉には、医学的な根拠と同じくらいの重みがあると信じています。
そんな温かみのある医療を、王子の街でも、そしてこれからも、この錦糸町南口の地で守り続けていきたい。
地域の皆さんの笑顔を支えるための歩みを、これからも愚直に進めてまいります。

美容医療への関心が高まる環境において、田尻氏の語る「内科的視点で皮膚を診る」というアプローチは、非常に堅実なものだ。
大学病院等で培った広範な知見を地域医療に還元しようとするその歩みには、医師としての明確な倫理観がうかがえる。
今後は王子での新たな分院展開も控え、その活動領域はさらに広がろうとしている。
錦糸町で築き上げた「対話と触診」を重視する医療が、新たな地でどのように根付いていくのか。その実直な展開を今後も追っていきたい。
錦糸町皮膚科内科クリニックについて

| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| クリニック名 | 錦糸町皮膚科内科クリニック |
| 院長 | 田尻 友恵(たじり ともえ) |
| クリニック紹介 | 錦糸町皮膚科内科クリニックは、2022年7月の開院以来、墨田区錦糸町エリアにて皮膚科・内科の両面から地域医療を支える。「目を見て、患部に触れる」対話重視の診療をコンセプトに、2024年の増床を経て医師4名体制(2026年5月インタビュー時点)による迅速な多角的診断を確立。皮膚疾患の背景にある内科的疾患の早期発見やQOL向上に寄与する包括的アプローチを実践している。 |
| 所在地 |
〒130-0022 東京都墨田区江東橋4-25-7 JUスカイタウン錦糸町1F |
| アクセス | 錦糸町駅JR総武線南口/メトロ半蔵門線2番出口より徒歩3分 |
| 電話番号 | 03-3635-4112 |
| 診療時間 |
【午前】9:00~13:00【午後】14:15~18:00 ※最終受付は診察終了30分前 水・日・祝日は休診日 |
| Webサイト | https://kinshicho-clinic.com/ |
| 公式メディア |
Instagram https://www.instagram.com/kinshicho_clinic X https://twitter.com/kinshicho_cli |
| ご予約 | 予約優先 |