体の不調を感じても、どこの科にかかればいいのか分からず、迷った経験はないだろうか。
足の痛みが整形の問題なのか、それとも別の病気なのか。
検査を受けても原因がはっきりせず、つらさだけが続くこともある。
そんなとき、まず気軽に相談でき、必要なら適切な専門へとつないでくれる医師が身近にいることは、暮らしの支えになる。
東京都荒川区南千住の土屋クリニックは、内科や消化器内科を中心に、子どもから高齢者まで、家族ぐるみで相談できるかかりつけ医を掲げている。
胃や腹部の不調、風邪や子どもの発熱、生活習慣病、そして「何科か分からない」という相談まで受け止める。

院長の土屋杏平医師は、消化器内視鏡の専門医であると同時に、臓器や科の枠を超えて地域を丸ごと診る「家庭医療」の専門医でもある。
祖父、父と受け継いだこの地で、3代にわたって地域の健康を支えてきた。
どんな症状でも、まずは相談できる場所でありたい。
土屋医師が大切にしている診療の姿勢を聞いた。
*1:日本プライマリ・ケア連合学会認定医・専門医検索
*2:日本消化器病学会 消化器病専門医名簿
*3:日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医名簿
*4:日本肝臓学会 肝臓専門医名簿
「どこにかかればいいか分からない」を、まず受け止める

―「地域に根差した、何でも相談できるクリニック」を目指していらっしゃいます。そこで大切にしていることは何でしょうか。
土屋:消化器内科を掲げてはいますが、それに限らず、風邪や生活習慣病、健康診断で引っかかった項目、皮膚の症状、お子さんの発熱まで、幅広く診ています。
実際のところ、体の不調は「これは何科なのか」が分かりにくいことが多いものです。
爪のトラブル、やけど、足の痛みが骨折なのか、痛風なのか、あるいは関節の病気なのか。
ご自身で見分けるのは、なかなか難しいと思います。
そうしたときに、どこへ行けばいいのか分からず、迷ってしまう方は少なくありません。
当院では、まずそれを受け止めることを大切にしています。
どこにかかるのがよいのかをこちらで見極めて、必要なら適切な専門へつなぐ。
どんな症状でも、まずは相談していい場所でありたいと考えています。
専門の科があることは大切ですが、その手前で、どんなことでもまず相談できる場所も、同じくらい必要だと考えています。
―紹介が必要なときは、どのようにつないでいるのでしょうか。
土屋:かかりつけの役割の一つは、適切な入り口になることだと思っています。
どの科にかかればいいのか分からないまま、あちこちを回り、行った先で「ここではありません」と言われてしまう。
そうして行き先に迷うのは、患者さんにとって大きな負担です。
ですから、まず当院で診て、どこで診てもらうのがよいのかを見極め、地域の病院や連携先の総合病院へ、適切につなぐようにしています。
紹介した先で、必要な治療にきちんとつながるところまでを見届けたい。
かかりつけがそうした交通整理を担うことで、患者さんが迷わずに済みます。
元気なうちは、あまり感じないかもしれません。
しかし、具合が悪くなったときや何かに困ったとき、まず相談できる場所が身近にあることは、とても心強いものです。
そうした信頼できる相談先があることが、地域の暮らしを支えると考えています。
土屋クリニックは、どんな症状でも、まずは相談を受けたいという思いでやっています。
その姿勢が地域に伝わればと思っています。
臓器ではなく、「その人」を診る

―「家庭医療」を専門にされています。どのようなものでしょうか。
土屋:家庭医療は、一言でいえば「かかりつけの専門医」です。
かつては、体の不調があれば、まず一人の医師が全体を診ていました。
ところが医療が進歩するにつれて、内科も循環器、消化器というように、どんどん細かく分かれてきました。
それぞれの専門性が深まるのは良いことですが、一方で、「最初に何でも診る先生」が見えにくくなってしまった面もあります。
その役割を、あらためて一つの専門として確立したのが、家庭医療です。
私は消化器内科の専門医を取ったうえで、家庭医療も学びました。
臓器を深く診る目と、体全体を広く診る目。
その両方を持っていたいと考えたからです。
似た言葉に総合診療がありますが、こちらは主に病院で、どの科の病気か分からないものを診察し、専門へつなぐ役割です。
家庭医療は、その視点を持ちながら、地域で暮らす人を継続して診ていくところに、より重きを置いています。
―家庭医療の視点では、どのような不調に向き合うのでしょうか。
土屋:検査をしても、はっきりした異常が見つからないのに、つらい症状が続く方がいらっしゃいます。
胃や腸に問題がないのにお腹が痛む、脳に異常がないのに頭痛が続く、といった具合です。
臓器だけを診ていると、「異常がないので大丈夫です」で終わってしまいがちです。
しかし、ご本人の症状は、確かにそこにあります。
家庭医療では、体の状態だけでなく、心の状態や、生活の背景まで含めて考えていきます。
仕事のストレスで眠れていない、子育てや介護に追われている。
そうした事情が、症状に関わっていることは少なくありません。
私にできるのは、お金や環境そのものを変えることではありません。
ただ、その背景を一緒に理解することはできます。
「これが影響しているのかもしれない」と気づくだけで、少し楽になる方もいらっしゃいます。
たとえば、当たり前になっていた短い睡眠時間を、一度見直してみる。
そうした小さなきっかけが、体調の変化につながることもあります。
必要に応じて専門の科へ紹介することもあれば、まず当院でできることから始めることもあります。
回復に向かっていくのは、ご本人自身です。
その方向を一緒に見つけていくのが、私の役割だと考えています。
3代続く、南千住のかかりつけ

―3代続く土屋クリニックを、2023年に継がれました。この地への思いをお聞かせください。
土屋:祖父の代から続くクリニックで、この建物は父が建てたものです。
私はその父から、2023年に引き継ぎました。
もともと、いずれはこの地を継ぐつもりでいました。
父の体調のこともあり、予定より早く戻ることになりましたが、迷いはありませんでした。
生まれも育ちもこの南千住で、クリニックの隣が自宅です。
幼稚園の頃にこのクリニックができたので、近所の患者さんには、子どもの頃の私を知っている方も多くいます。
「あの頃は小さかったのにね」と、声をかけていただくこともあります。
祖父や父の代から通ってくださる方もいて、世代を超えて顔なじみになっていきます。
地域にかかりつけがあることの意味を、私自身、この街で育つなかで感じてきました。
かかりつけの大切さは、どの地域にも言えることだと思います。
ただ、私が日本中を診てまわることはできません。
自分が生まれ育った、縁のあるこの地でなら、それを形にできると考えています。
―承継にあたって、変えたこと、大切にしたことはありますか。
土屋:父のやり方を受け継ぎながら、時代に合わせて少しずつ変えてきました。
電子カルテを導入し、予約を取りやすくし、内視鏡を日常的に行えるように整えました。
以前は予約なしで来られる方が中心でしたが、Webでも電話でも、当日でも受診できるようにしています。
Webでの予約に慣れていない方も、受診しづらくならないようにするためです。
看板や外装も整え直し、代替わりしたことが地域に伝わるようにしました。
一方で、変えずにいることもあります。
それは、基本的に私自身が診る、ということです。
かかりつけは、同じ医師が続けて診るからこそ、これまでの経過も、その方の人となりも分かります。
その積み重ねが、代々続いてきたクリニックの根にあると考えています。
医師を志した高校時代と、救急で鍛えられた研修医時代

―先生が医師を志したのは、どのような経緯だったのでしょうか。
土屋:医者の家に生まれ、幼稚園の頃に、ちょうどこのクリニックができました。
ですから、周りの大人から「将来はお医者さんね」と言われて育ったところはあります。
ただ、はっきりと医師を目指したのは、高校生の頃です。
実を言うと、一度は別の道も考えました。
もともと生物学が好きで、当時話題になっていた脳科学にも心を惹かれていました。
研究者として生きる将来を思い描いたこともあります。
加えて、医学部受験という高い壁もあり、迷いは深まるばかりでしたが、家族は無理に勧めることなく、好きにしていいと見守ってくれました。
そのなかで最後は、自分自身で答えを出しました。
行き着いたのは、自分のためだけに勉強し続けるのは苦しいけれど、学んだことが誰かのためになるなら頑張れる、という思いです。
医学は、学んだことが目の前の患者さんにそのまま生きる、理にかなった学問だと思えました。
それなら進んでみようと、腹を決めました。
振り返ると、あのとき迷ったからこそ、心から納得して選べたのだと思います。
―その経験は、日々の診療にどうつながっているのでしょうか。
土屋:専門を選ぶ入り口では、実のところ、進む道を決めきれずにいました。
ただ、どの分野に進むにせよ、一人前の医師になるには、どんな病気にも向き合える力が要ると考えていました。
最後に頼れるのは、自分の判断だからです。
そこで、さまざまな症状を診られるような、救急にも力を入れている病院で研鑽を積むことにしました。
二次、三次救急があり、昼夜を問わず、歩いて来る人も救急車も、誰でも診る現場です。
研修医の頃は、内科も外科も関係なく、外傷を縫ったり、骨折の処置をしたり、皮膚や整形の症状まで診たりしました。
当時から、いずれ地元のクリニックを継ぐことは頭にありましたが、それに備えるためというより、せっかく医師になったのだから、診療科を限らず自分で診られる医師でありたい、という思いのほうが強くありました。
あのころ培った経験が、地域でどんな相談も受ける、日々の診療の支えになっています。
数を追わず、一人ひとりに時間をかける内視鏡

―内視鏡検査にも力を入れていらっしゃいます。どのようなことを大切にされていますか。
土屋:胃カメラや大腸カメラを、日常的に行っています。
承継してから、患者さんが受けやすいように整えてきました。
心がけているのは、数を追わないことです。
一日に多くの件数をこなすのではなく、お一人おひとりに時間をかけるようにしています。
検査の結果だけをお渡しして終わりでは、本当に相談したいことが話せないまま、ということも起こりえます。
それは避けたいと思っています。
胃カメラや大腸カメラに対して、つらそう、怖い、という印象を持つ方も少なくありません。
ですから、事前にしっかりご説明し、体の負担をできるだけ和らげるようにしています。
少しでも楽な気持ちで受けていただけるよう、心を配っています。
検査のあとには、画像を一緒に見ながら、気になることを相談していただけます。
分からないことを、そのままにせずに済む。
それが、丁寧に時間をかける意味だと思っています。

―検査の結果を、その後にどうつなげていくのでしょうか。
土屋:内視鏡の目的は、異常を見つけることだけではないと考えています。
見つかった所見が何を意味し、これからどうしていけばよいのか。
そこまで丁寧にお伝えして初めて、その結果が次の一歩につながります。
たとえば荒川区の内視鏡検診では、自覚症状のないうちに受けていただくことで、胃がんを早い段階で見つけられる場合があります。
早く分かるほど、選べる手立ても広がっていく。
これは胃に限らず、大腸の検査でも同じです。
そして、かかりつけとして日頃から診ているからこそ、検査を受けたほうがよい時期をお伝えでき、その後の経過まで続けて一緒に見ていくことができます。
検査を一度きりで終わらせず、これからの健康へとつないでいく。
そこに、かかりつけで内視鏡を行う意味があると考えています。
病気になる前から、家族ぐるみで支える

―予防にも力を入れていらっしゃいます。そこにはどのような考えがありますか。
土屋:診療というと、病気を治療することが中心に思われがちですが、その手前で、病気になりにくい体を保つことも同じくらい大切だと考えています。
病気になってから対処するよりも、その手前で防ぐことができれば、体への負担も、暮らしへの影響も小さく済みます。
当院が予防に力を入れているのは、父の代から受け継いだ姿勢でもあります。
禁煙外来は父が平成の中頃から続けてきたもので、健康診断や産業医としての関わりも重ねてきました。
少し珍しいところでは、船に乗るための資格に必要な船員健診も行っています。
生活習慣病の管理も、こうした予防の延長にあるものです。
健康診断で気になる数値が見つかったとき、食事や生活の見直しから、その先の治療まで一緒に考えていけるのも、かかりつけの役割だと思います。
なお、当院は看護師2名、受付3名の少人数の体制で、一人ひとりに目が届くようにしています(*5)。
―幅広い年代を診ていらっしゃいます。家族ぐるみのかかりつけとして、大切にしていることは何でしょうか。
土屋:内科だけでなく小児の診療も行っており、0歳のお子さんから高齢の方まで来てくださいます。
ご家族みんなで通ってくださることも少なくありません。
お父さんお母さんの生活習慣病を診て、お子さんの発熱に対応し、おじいちゃんおばあちゃんの相談にも乗る。
世代をまたいで一つの家族を続けて診られるのは、かかりつけならではだと感じています。
小さい頃から診てきたお子さんの成長を、そばで見守れるのも、この仕事のありがたさです。
予防接種やアレルギーの治療、ご自宅での診療まで、暮らしのそばで支えていきたい。
どんな年代の、どんな不調でも、まずは気軽に相談していただける場でありたいと考えています。
*5:2026年8月インタビュー時点、土屋クリニック調べ
医療を通じて、その人の幸せに向き合う

―診療の根にある、大切にされている考えをお聞かせください。
土屋:研修医の頃、指導してくださった内科部長から聞いた言葉が、ずっと心に残っています。
「医療を通じて、人の幸せを追求する」。
病気を治療することは、そのための手段の一つにすぎない、という考え方です。
病院にいた頃、たとえば消化器の病気に対処できても、それでその人が健康を取り戻し、幸せに過ごせるとは限らない、と感じる場面がありました。
病院では、入院した患者さんが退院すれば、一つの区切りになります。
しかし、その人の本当の困りごとは、退院してからの暮らしのなかにあることも少なくありません。
病気に対処することだけを目標にすると、こぼれ落ちてしまうものがあるように思います。
人が抱える病気は、一つとは限りません。
暮らしの事情も、人それぞれです。
かかりつけであれば、その人の暮らしのなかで、続けて向き合っていけます。
医療にできるのは、その人の幸せの、ほんの一部かもしれません。
ただ、その一部を、丁寧に担っていきたいと考えています。

―これから、どのようなクリニックでありたいとお考えですか。
土屋:生きている以上、誰にでも、体のことで困るときは訪れます。
目指しているのは、そうしたときに、地域の方が、まず思い浮かべてくださる場所であることです。
体の不調はもちろん、どこにかかればいいか分からないことも、検査では異常が出ないつらさも、まず持ち込んでいただいていい。
そこから、必要な道筋を一緒に見つけていければと思っています。
何科にかかればいいのか分からない、その一点で受診をためらう必要は、少しもありません。
祖父、父と3代続いてきたこのクリニックを、これからも地域とともに続けていきたい。
どんなに些細なことでも、迷ったときは、まず相談していただきたいと思っています。
それが、かかりつけ医としての私の願いです。
「あの頃は小さかったのにね」。
取材のなかで、土屋院長が患者からそう声をかけられる、という話をしていた。
生まれ育った南千住で、祖父、父と続いたクリニックを継ぎ、幼い頃の自分を知る人々を、医師として診ている。
土屋院長が向き合うのは、臓器や病名だけではない。
検査で異常が出ないつらさ、どこにかかればいいか分からない不安、暮らしのなかの困りごと。
診療科の枠からこぼれ落ちてしまうものを、まず受け止めようとする姿勢が、そこにはあった。
専門が細かく分かれた医療のなかで、最初に何でも診る医師の存在は、かえって得がたいものになっている。
その姿勢の根には、研修医時代に恩師から受け取った、「医療を通じて人の幸せを追求する」という言葉がある。
病気に対処することは、そのための手段の一つにすぎない。
だからこそ、治療の先にある暮らしまで、続けて見ていく。
3代にわたって南千住に根を張ってきた土屋クリニックは、これからも、街の人々が頭に思い浮かべる場所であり続けていくのだろう。
土屋クリニックについて

| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| クリニック名 | 土屋クリニック |
| 院長 | 土屋杏平(つちや きょうへい) |
| クリニック紹介 | 3代続く南千住のかかりつけ医。内科・消化器内科を中心に、家庭医療の視点で、子どもから高齢者まで幅広く診る。内視鏡検査、生活習慣病、予防接種、健康診断、禁煙外来、訪問診療などに対応する。 |
| 所在地 |
〒116-0003 東京都荒川区南千住7丁目12-15 |
| アクセス | JR常磐線・東京メトロ日比谷線・つくばエクスプレス「南千住駅」徒歩5分/京成本線「千住大橋駅」徒歩12分/都電荒川線「三ノ輪橋駅」徒歩11分 |
| 電話番号 | 03-3806-9029 |
| 診療時間 |
月・水・金 9:00〜11:00/12:00〜13:00/17:00〜18:30 火 9:00〜11:00/12:00〜13:00(土屋譲理事長の外来日) 木・土 9:00〜11:00/12:00〜13:00 休診日:火・木・土の午後、第1土曜は終日、日曜・祝日 ※受付終了は各診療時間の15分前 ※発熱外来は月〜土の11:00〜12:00、月・水・金の16:00〜17:00(事前の電話予約が必要) ※小児診療は原則として火曜以外 |
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