体調が悪いのに、どの科を受診すればいいのか分からない。
原因のはっきりしない痛みや不調を抱え、いくつもの医療機関を回るうちに、疲れてしまう。
そんな経験を持つ人は、少なくないのではないだろうか。
新潟市中央区のできじまクリニックは、日々の体の不調から、怪我や急な体調の変化まで、全身を見渡して診ることを大切にしている。
院長の田嶋淳哉氏は、救急・集中治療の現場で、全身の状態が悪い患者さんを数多く診てきた医師だ。
高血圧、脂質異常症、糖尿病、高尿酸血症などの生活習慣病、睡眠時無呼吸症候群、貧血などの内科診療を軸に、怪我から発熱まで幅広く初期対応し、必要に応じて専門の医療機関へとつなぐ。
なぜ、救急の専門医が、まちのクリニックを開いたのか。
そして「全身を診る」という経験は、日々の診療にどう生きているのか。
地域のかかりつけ医として親身に向き合う診療の、その根にある考えを聞いた。
*1:日本救急医学会 救急科専門医(新潟県)
*2:日本集中治療医学会 集中治療専門医(新潟県)
まちの内科として、体全体を診る

―できじまクリニックがどのようなクリニックか、その特徴からお聞かせください。
田嶋:当院は、内科を軸にしながら、怪我でも発熱でも、幅広く対応することを大切にしているクリニックです。
受診されるのは、一般的な内科の不調で来られる方が中心です。
そのうえで、怪我や急な体調の変化にも、同じ場所で対応しています。
何か特定の病気だけを深く診るというより、体の不調を全般的に受け止める、という立ち位置です。
患者さんのなかには、どこか一か所が痛いというより、しびれもあれば痛みもあって、日によって症状の出る場所も違う、という方が少なくありません。
そうすると、内科に行けばいいのか、整形外科なのか、ご本人にもよく分からないまま、いくつもの医療機関を回ってしまうことになります。
どこに行けばいいか分からない不調も、その一つとして受け止められる場所でありたいと考えています。
―さまざまな症状を診るというのは、具体的にはどのような範囲まで対応されるのでしょうか。
田嶋:たとえば発熱から、ちょっとした怪我で傷を縫うような処置まで行います。
一般的に、手足の怪我であれば整形外科という受け皿がありますが、お腹をぶつけたといった怪我は、診てもらえる場所が限られています。
特にお子さんの場合、頭を打った、お腹をぶつけたというときに、どこを受診すればいいのか迷われる方が多くいらっしゃいます。
当院では、そうした頭やお腹の怪我も、年齢を問わず診ています。
病気なのか、外からの衝撃によるものなのかで区切らず、同時に評価していく。
救急の現場で、あらゆる不調を入り口で受け止めてきた経験が、そのまま生きている部分だと思います。
「救急科」に込めた意味。夜間対応ではなく、幅広く診るということ

―ホームページでは、内科に加えて「救急科」も掲げていらっしゃいます。この救急科とは、どのような意味なのでしょうか。
田嶋:救急という言葉には、夜間や緊急のときに対応する、というイメージを持たれる方が多いと思います。
当院が診療しているのは、あくまで日中の通常の診療時間です。
内科でも外科でもなく、全身を診る。
その立ち位置を端的に表せるのが、私にとっては救急という言葉だったのです。
―「救急科」という標榜には、どのような患者さんに来てほしいという思いがあるのでしょうか。
田嶋:ちょっとした不調だけれど、どこに行けばいいのか分からない。
これは何科にかかればいいのだろうと迷ってしまう。
そうしたときに、まず相談してもらえる場所でありたい、という思いを込めています。
救急の現場では、どんな症状の方が来ても、まずはその場で受け止め必要な対応を見極めるということを続けてきました。
その入り口としての役割を、まちのクリニックでも担えないか。
夜間の対応こそしていませんが、日中の急な不調にも、その場で落ち着いて対応する。
そういう場所として、救急科という言葉を選んでいます。
全身を、その場で診る。CTと当日の検査という備え

―設備の面で、力を入れていることはありますか。
田嶋:一つは、CTです。
当院ではCTを備えていますが、大切にしているのは頭でも、胸でも、お腹でも、首でも、どの部位であっても評価する、という点です。
体の一部分だけを診るのではなく、どこに原因があるか分からない不調に対して、全身を見渡して確かめられるようにしています。
これは、救急や集中治療の現場で、全身の状態を管理してきた経験があるからこそできることだと考えています。
そうした診療の仕方を、日々の中でも大切にしています。

―検査については、どのような工夫をしているのでしょうか。
田嶋:血液検査の多くは、外部の検査機関に出して、結果が出るまでに数日かかることが少なくありません。
当院では、なるべく多くの項目を院内で出せる体制を整えています。
その日のうちに結果が分かれば、次の対応までが早くできることにつながります。
また、複数の医療機関にかかっている方の場合、それぞれで出された薬やこれまでの経過を一通り見直すようにしています。
体全体のバランスを見て必要があれば、飲み合わせや量について相談させていただく。
そうした全体を見渡す視点も大切にしている部分です。
一つひとつの診療を支える、救急・集中治療の経験

―内科や発熱外来のほかにも、睡眠時無呼吸症候群や、アレルギーの舌下免疫療法など、さまざまな診療を掲げていらっしゃいます。これには、どのような背景があるのでしょうか。
田嶋:私がこれまでの現場で扱ってきたことと地続きの領域を扱うことにしています。
たとえば睡眠時無呼吸症候群の治療では、CPAPという呼吸を助ける機械を使います。
この機械の調整は、集中治療の現場で人工呼吸器を扱ってきた経験と通じるところがあります。
特別に掲げているというより、内科診療の延長として、必要な方に対応しています。
―アレルギーの治療についても、同じような背景があるのでしょうか。
田嶋:救急の現場では、アレルギーによって急激に全身の状態が悪くなる、アナフィラキシーという反応に数多く対応してきました。
どういう場合に慎重になるべきで、どこまでなら進めてよいか。
その見極めには、救急の現場で対応を重ねてきた経験が生きています。
何かあったときにすぐ対応できるという備えがあるからこそ、こうした治療も落ち着いて行えます。
幅広く見えるかもしれませんが、いずれも内科の診療とつながっているものです。
専門医に対する「バランサー」という役割

―「全身を診る」ことの意義を、どのようにお考えでしょうか。
田嶋:医療には、特定の領域を深く極めた専門医の先生と、全身を幅広く診る医師の、両方が必要だと考えています。
心臓なら心臓、お腹ならお腹と、その分野を専門とする先生の技量はとても高いものです。
一方で、複数の不調が重なっていたり、どこに原因があるか分からなかったりする場合には、全身を見渡して、バランスを整える役割を担える人、「バランサー」も必要です。
全身を診て、ここは専門の先生にお願いしたほうがよいという部分が見えてくれば、そこへつないでいく。
そうした橋渡しの役割です。
―そうした「バランサー」の役割は、地域の医療のなかでどのように生きるのでしょうか。
田嶋:特に、医師の数が限られている地域では、この役割が大切になると感じています。
専門の先生が十分にそろっていれば、それぞれの領域を深く診ていくことができます。
しかし、医師自体が足りない地域では、まず全身を診て、どこに手を打つべきかを見極められる医師が求められます。
状態を整えて、必要なところを専門医につないでいく。
その入り口があるだけで、患者さんが行き場をなくさずに済みます。
私自身が救急や集中治療で担ってきたことの一つが、まさに全身を診て調整するという役割でした。
その経験を、地域のクリニックという場で生かしていきたいと考えています。
まず、じっくり聞く。経過の長い不調に向き合う問診

―初めて受診する方の不安を和らげるために、問診で心がけていることはありますか。
田嶋:どこに行けばいいか分からないような不調を抱えている方は、経過が長かったり、症状がうまくまとまっていなかったりすることが少なくありません。
そうした話を、限られた診察時間のなかで、私が一から順に聞いていくと、どうしても時間が足りなくなってしまいます。
そこで当院では、まず看護師がこれまでの症状の経過やこれまでにかかった医療機関について、時系列で確認するようにしています。
話を聞いて、要点を整理することに慣れたスタッフが先に耳を傾ける。
その上で、私が要点を押さえて診ていくという流れをとっています。
―スタッフの方が先に話を聞く、という体制を取っていらっしゃいます。どのような狙いがあるのでしょうか。
田嶋:一つは、患者さんが話しやすくなることです。
医師を前にすると構えてしまう方でも、看護師には普段の困りごとを自然と話せることがあります。
もう一つは、限られた時間をより丁寧な診療にあてられることです。
あらかじめ経過が整理されていれば、私はその要点をもとに、必要なところを深く確認していけます。
結果として、一人ひとりに向き合う時間を、しっかり確保できるのです。
スタッフと役割を分け合いながら、長い経過のある不調にも、じっくり向き合える体制を整えています。
医師を志し、「全身を診る」道へ

―田嶋院長が医師を志したのには、どのようなきっかけがあったのでしょうか。
田嶋:はっきりとした転機になったのは、高校生のときの出来事です。
それまで身近に接してきた親族を亡くしました。
自分がよく知っている人が、この世からいなくなってしまう。
そのことを初めて実感し、大きな衝撃を受けました。
あのとき、何かできることはなかったのだろうか。
そうした思いが少しずつ、医師という道へと向かう気持ちにつながっていったように思います。
もともと、私の周りには医学部を目指す同級生が多く、兄も先に医学部へ進んでいました。
医療が自然と意識にのぼる環境ではありました。
そのなかで、あの経験が漠然としていた思いを現実の進路へと変えていきました。
―数ある診療科のなかで、救急を選ばれたのはなぜだったのでしょうか。
田嶋:もともと、特定の一つの分野だけでなく、いろいろな病気を診られる医師でありたい、という思いがありました。
研修医の頃、心臓も、肺も、お腹も、頭も、あらゆる部分の状態が悪い患者さんを担当したことがあります。
それぞれの専門の先生が、自分の領域を診てくださるのですが、では全身を通して舵を取るのは誰なのか、というと、はっきりしない場面がありました。
全体を見渡して、どことどこのバランスを取るかを考える。
そこに、強く魅力を感じたのです。
一つの臓器を深く診るだけでなく、全身を管理し、調整できる医師でありたい。
その思いから、救急という道を選びました。
新潟で「救急科」を掲げて開く。地域に長く貢献するために

―救急・集中治療の現場から、まちのクリニックを開くという選択には、どのような思いがあったのでしょうか。
田嶋:救急の現場に長くいるなかで、感じていたことがあります。
体調を崩した方が、どこを受診すればいいか分からないまま、いくつもの医療機関を巡ってしまう。
あるいは、複数のクリニックにかかって、たくさんの薬を飲んでいる。
そうした場面を、数多く見てきました。
しかし、もっと手前の段階で、整理できる場所があれば、患者さんが行き場をなくさずに済むのではないか。
そう考えるようになりました。
その入り口の役割を、地域のクリニックという形で担いたい。
それが、開業を選んだ大きな理由です。
―数あるクリニックのなかで、「救急科」を掲げようと思われたのはなぜでしょうか。
田嶋:新潟は、医師の数が限られている地域です。
だからこそ、一人の医師が全身を診るという診療が、以前から求められてきました。
そのなかで、ただ内科として開くだけでは、私がやる意味は薄いと考えました。
救急を専門としてきた自分が、その経験を生かして幅広く診る。
そう掲げることに、意味があると思ったのです。
新潟で救急科を掲げて開業するのは、私が知るかぎり例のないことでしたが、だからこそ挑む価値があると感じました。
ちなみに、「できじま」という名前は、地域の方が場所をイメージしやすいようにと、つけたものです。
一から設計した、通いやすい院内

―できじまクリニックは、既存の医院を引き継ぐのではなく、一から設計して開かれたとうかがいました。そこには、どのような考えがあったのでしょうか。
田嶋:開業のかたちとしては、どこかの医院を引き継ぐという方法もありました。
実際に、その道も検討しました。
ただ、私が思い描く診療のかたちを実現するには、建物の構造や動線から自分で設計したほうがよいと考えたのです。
たとえば、車椅子の方がスムーズに通れる通路の幅や、患者さんの動きやすい配置。
こうしたものは、既存の建物を使うと、どうしても制約が出てしまいます。
どんな方でも通いやすい場所にしたい。
その思いから、一から設計してつくることを選びました。

―院内の設計で、特に工夫された点はありますか。
田嶋:発熱などの症状がある方のための診察室を、四つ設けたことです。
感染症の流行を経て、熱や咳のある方と、そうでない方が、待合で近くに座ることに不安を感じる、という声が増えました。
そこで、発熱の症状がある方が、ほかの患者さんと動線を分けて受診できるようにしています。
一つの部屋だけでは、混み合う時期にはすぐにいっぱいになってしまいます。
複数の部屋を用意しておくことで、発熱の方も、そうでない方も、それぞれが落ち着いて受診できるようにしました。
これから先も、感染症への備えは欠かせません。
そうした備えも含めて、通いやすさを設計の段階から考えています。
困ったときに、すっと行ける場所へ。受診を考える方へ

―これから、できじまクリニックをどのようにしていきたいとお考えでしょうか。
田嶋:目指しているのは、体の不調を、全体から診られる場所です。
ここに来れば、まず診てもらえる。
必要なときには、この症状はこちらの専門の先生がよいでしょう、という案内までしてもらえる。
そうした役割を担う場所が、地域にもっと増えていくといいと考えています。
病院のなかでも、全身を診る役割を担う医師が、少しずつ増えてきました。
同じ役割が、まちのクリニックにも必要だと感じています。
自分のところで診つつ、必要なところへ道案内もする。
そういう場所を、この地域で続けていきたいと思っています。
―最後に、受診を迷っている方へ、伝えたいことをお聞かせください。
田嶋:体の調子が悪いけれど、どこにかかればいいのか分からない。
そういうとき、まず気軽に相談に来ていただける場所でありたいと思っています。
これは何科だろう、こんなことで受診してもいいのだろうか、と迷う必要はありません。
困ったことがあれば、まずは診て、必要なところへおつなぎします。
症状がはっきりしなくても、いくつも気になることが重なっていても、構いません。
その方の体全体を見渡しながら、一緒に考えていきます。
どうぞ、困ったときに、気軽に頼っていただければと思います。
田嶋院長の話を通して伝わってきたのは、体の不調を、どこか一か所ではなく、その人の全身として捉えようとするまなざしだった。
救急や集中治療の現場では、全身の状態が悪い患者さんを前に、どこにどう手を打つかを見極め、調整することが求められる。
田嶋院長は、その経験を「バランサー」という言葉で表した。
一つの臓器を深く診るのではなく、全体を見渡して整え、必要なところを専門医へつなぐ。
その役割を、まちのクリニックという、より手前の場所で担おうとしていた。
もう一つ印象に残ったのは、内科を軸にしながら、怪我や急な体調の変化まで、同じ場所で引き受けようとする姿勢だ。
目の前の不調がどの領域のものであっても、まず自分たちで向き合う。
その構えを、救急や集中治療で積み重ねた経験が支えている。
体の調子が優れないとき、一つの科に絞りきれないことは少なくない。
そんなとき、体全体に目を向けて診てくれる場所が、地域にある。
できじまクリニックは、そうした診療を続けようとしている。
できじまクリニックについて

| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| クリニック名 | できじまクリニック |
| 院長 | 田嶋淳哉(たじま じゅんや) |
| クリニック紹介 | 2024年11月開院。内科・救急科を掲げ、救急・集中治療の経験を生かして、怪我から発熱まで幅広く初期対応する。頭やお腹の怪我、小児の怪我にも対応し、CTによる全身の評価や、当日結果を出せる血液検査の体制を整える。睡眠時無呼吸症候群や舌下免疫療法、健康診断まで診療し、地域のかかりつけ医として、どの科を受診すればよいか分からない不調にも向き合う。 |
| 所在地 |
〒950-0973 新潟県新潟市中央区上近江4-7-1 DEKKY401第1駐車場内 |
| アクセス | 新潟交通バス「上近江」から徒歩6分/「上山学校前」から徒歩8分 |
| 電話番号 | 025-282-7303 |
| 診療時間 |
9:00〜12:30/14:30〜17:30 休診日:水曜午後・土曜午後・日曜・祝日 |
| Webサイト | https://dekijima-clinic.com/ |
| ご予約 | デジスマ診察券・Web・電話 |